米国留学中、激しい胃痛を訴えた妻を夜中に病院へ運び込んだ。診断もはっきりしない状態で、いきなりモルヒネの投与。1錠数千円の強力な痛み止めを処方され、病院を放り出された。「痛くなったらまた来て」と。
案の定、翌日、緊急入院となった。超音波、胃カメラ、腸カメラ……。次々に検査をしたが、それらしき病変はない。専門医に「胃炎は?」と尋ねると、「胃カメラでは判別できない」と、日本ではまずあり得ない答え。超小型カメラ内蔵のカプセルをのむ、100万円を超す最先端の検査を勧められたが、断った。2泊3日の入院費がいくらだったのか。海外留学保険のキャッシュレスサービスを利用したので知るすべもないが、救急室で点滴を1本打ってもらった知人は3000ドル(27万円)を請求されたという。
高額の医療費は、医者の診療報酬が高いからだが、その医者も年間1000万円と言われる賠償責任保険の掛け金の支払いに苦しむ。元をただせば医療訴訟の増加が原因だ。米国と比べて、日本の医療は押しなべて良質で安価だと思う。医療崩壊は食い止めたい。【岡田功】
毎日新聞 2010年2月9日 大阪夕刊