きょうの社説 2010年2月12日

◎北陸の景気動向 わずかに薄日の気もするが
 日銀金沢支店が発表した2月の金融経済月報の注目点は、北陸の製造業の生産が、全体 として持ち直す動きが見られることだ。在庫調整が進み、中国などアジア向けを中心に輸出が急回復しており、石川県では電気機械、富山県では医薬品と、それぞれ主力産業の増加が目立つ。個人消費も自動車や家電販売が比較的好調で、右肩下がりだった住宅投資にも下げ止まりの兆しが見える。

 内閣府発表の2009年10〜12月期の機械受注統計は、「船舶・電力を除く民需」 で、前期比0・5%増の2兆810億円と、1年9カ月ぶりにプラスへ転じ、特に製造業は前期比17・8%増の高い伸びを示している。民間設備投資の先行指標となる統計だけに、製造業が地域経済のけん引役となっている北陸には心強い。「トヨタ・ショック」や円高などの影響で、日経平均株価が1万円を割り込み、景気の体感温度はまだまだ低いが、消費者心理がいつまでも後ろ向きのままでは、回復に水を差す。わずかとはいえ、先行きに薄日が差してきていることも承知しておきたい。

 日銀金沢支店の金融経済月報を見ると、北陸の製造業は、デジタル家電や携帯電話関連 の電子部品といった電気機械が、中国・韓国向けを中心に需要が底堅く、化学は後発医薬品が市場拡大により増加を続けている。一般機械、鉄鋼・非鉄も低水準ながら持ち直しており、建設機械や工作機械は輸出に支えられ、緩やかな回復軌道に乗ってきた印象がある。繊維は高付加価値品の需要が低迷しているものの、自動車内装材などの非衣料品に持ち直しの動きがある。

 個人消費は百貨店・スーパーの売上高を見る限り、引き続き低迷している。ただ、乗用 車販売は、減税や補助金効果で、1月の乗用車新車登録台数が6カ月連続で前年を超え、前年同月比28・9%の高い伸びを示した。家電販売もエコポイント対象商品が売れている。住宅投資は、持ち家が5四半期ぶりに前年を上回り、底を打った可能性がある。住宅版エコポイントの開始で、リフォームを含めた需要が盛り上がれば、消費を下支えする大きな力になるだろう。

◎ハーグ条約加盟圧力 「親権」の国民的議論を
 国際結婚が破たんした夫婦間で、子どもの親権をめぐるトラブルが増えているため、こ れに対処する「ハーグ条約」への加盟を日本に迫る国際的な圧力が強まっている。

 キャンベル米国務次官補は、同条約未加盟のままでは、北朝鮮の拉致問題に対する米国 の対日支援に悪影響を及ぼしかねないと警告したという。子どもを国家に拉致された親の悲しみと、離婚による連れ去りで子に会えなくなった親の悲しみを同列に論じて条約加盟を求める米政府の主張には違和感を覚えるが、国際結婚が当たり前の時代にあって、先進国中、日本だけ同条約の枠外に居続けることはできまい。

 条約に加盟するには、国内の関連法の整備はむろん、親権に関する国民の意識の国際化 も必要であり、国会でまさに国民を巻き込んだ議論を行ってもらいたい。

 ハーグ条約には現在、欧米を中心に80カ国余が加盟している。子どもが夫や妻に連れ 去られた時、返還を求められた加盟国は、子の居場所を調べ、もとの在住国に戻す義務を負うことになる。

 条約発効から20年以上たっても日本が未加盟の背景には、これまで国際結婚がそれほ ど多くなかったことに加え、家族や親権に関する法制度の違いや国民の意識、認識の差異がある。

 条約に加盟する欧米諸国は、夫婦が離婚しても双方に親権を認める「共同親権」制が普 通なのに対し、日本は一方にだけ親権を認める「単独親権」制であり、大抵は母親が子を引き取っている。

 国際結婚が増加した近年は、離婚により無断で子どもを連れて帰国する日本女性が増え ている。こうした行動は、共同親権者からみると、子の略奪であり、誘拐容疑で手配された日本女性もいる。

 また、子を連れ戻そうとした米国人が未成年者略取の疑いで日本の警察に逮捕されたり 、外国人の父親が子を海外に連れ去り、日本の母親は泣き寝入りするほかないという不幸な事例も起きている。こうした問題は、やはり国際条約の共通ルールの下で解決を図るのが最もよいであろう。