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【さらば革命的世代】第2部(3)機動隊員にも妻子がある 警察の方針転換 (1/4ページ)
このニュースのトピックス:さらば革命的世代
■ヘルメットが割れた
「正視に堪えない…」。昭和43年10月2日、東京都港区の青山葬儀所。当時、警視庁外事1課長だった元内閣安全保障室長の佐々淳行さん(77)は、喪章をつけたまま、うつむくしかなった。棺の近くには6歳と4歳になる2人の遺児が、事態を飲み込めずに無邪気な表情で座り、その横で31歳の未亡人が嗚咽(おえつ)していた。
夫は、警視庁第5機動隊分隊長、西条秀雄巡査部長=当時(34)。前月4日未明、日本大学経済学部本館のバリケード封鎖解除に出動し、校舎4階付近から落とされた人頭ほどのコンクリートの塊が頭を直撃、頭蓋骨骨折で意識不明のまま25日後に死亡した。大学紛争による警察官の殉職は初めてだった。
コンクリートの重さは約16キロ。かぶっていたヘルメットが二つに割れるほどの威力だったという。
「あんなもの落とされたら死ぬに決まってるだろう」「機動隊員だって妻子がいるんだぞ」。怒りに震える参列者たち。2階級特進で警部となった西条さんの遺影を前に、警視庁幹部らは警備態勢を大転換する方針を固めた。「身内意識」の強い警察にとって、事件はそれほどの衝撃だった。
当時の公安1課長、村上健警視正はその日の記者会見で憤りをあらわにした。「警視庁はこれまで学生側にも言い分があると思っていたが、もうこれからは手加減しない」
同年11月から警備1課長に就任した佐々さんは「この一件で警察は態度変えた」と振り返りつつも、「それでも警察の役目は相手を生かして逮捕して裁判にかけることにある。死者を出さない警備をせねばならず、結果的にわれわれの側が大きな被害を受けることになった」と話す。