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【さらば革命的世代】(10)「過去を振り返れない人たち」 (2/4ページ)
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■マルクーゼの思想
全共闘世代と一口にいってもそこには多様な人生があり、一くくりに扱うのは乱暴かもしれない。
だが、その後も活動家などとしてブレなかった一部を除くと、数十万人ともいわれる全共闘学生の多くは、サラリーマンに「転向」したという言い方もできるだろう。
昭和49年のオイルショックまで就職戦線は完全に売り手市場。
一部のリーダーを除けば、多少の活動歴はあっても商社や流通業などは青田買いで内定を出し、就職試験が比較的遅かったマスコミや公務員にも多くの闘士たちが駆け込み的に集まった。
ただ、ヘルメットを捨て、髪を切り、紺のスーツに着替えて「資本主義の先兵」となることに、彼らはどう理屈づけをしたのだろうか。
その一つの答えとして大塚さんは当時、学生たちの支持を集めたドイツ出身の哲学者、ヘルベルト・マルクーゼの思想を示した。
「体制の外側からの革命ではなく、体制の中に身を置いて理想を実現せよ」と説く考え方である。
ただ、この思想は、表面上は組織に従いながらも「その日」に備えるという高等戦術である一方、ダブルスタンダードを簡単に認めてしまうという諸刃の剣でもある。
大塚さんは「この論理が就職への抵抗感を薄めたことは確かだ。そして彼らは実際に体制に溶け込んだが、その後、彼らが自身の思想を体現すべく動き出した気配はない。実は体現すべき自己がそもそもなかったのではないだろうか」と疑問を呈する。