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【さらば革命的世代】(8)ムラの弁護士の転向論 (1/4ページ)
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■「左」から「右」へ
全国で「村」にある弁護士事務所はわずか3件。そのうちの1件が奈良県明日香村にある飛鳥京法律事務所だ。
ここで一人、孤塁を守る弁護士の松原脩雄さん(63)は東大全共闘の元闘士だった。
昭和44年1月の安田講堂攻防戦で凶器準備集合罪などで逮捕、起訴された一人でもある。
「塀の中に入った人の気持ちが分かる」という異色の弁護士だが、還暦を過ぎた今の思想を尋ねると「どちらかといえば右」と答えた。
「考え方が変わったということ。つまり転向です。伝統的保守を大事にする民主主義に落ち着きました」
消費税の是非が問われた平成2年の衆院選では、当時の土井たか子委員長のもと、請われて社会党から出馬し、衆院議員を1期務めた。
ただ、同党の非現実路線にはすでについていけず、政権交代能力のある政党に変えようと自衛隊や原発容認論などに取り組んだ。
最終的に社会主義や共産主義と決別するきっかけになったのは翌年のソビエト連邦の崩壊だった。
「マルクス主義の世界観が完全に終わった」と思った。
全共闘世代で、松原さんのように堂々と「転向」を口にする人は、むしろ少数派だ。
転向という言葉に後ろ暗い意味合いを持たせ、自らの過去や思想の移り変わりをはっきりと語らない人も多い。
若かりし日には、なぜ運動をするのかと問われ「ベトナム戦争」「大学解体」と明快に答えた人たちも、運動から離れた理由については口をつぐんでしまう。
松原さんは、選挙戦でも運動歴を隠さなかった。
「昔で言うところのゲバ学生でした」と演説などで公言し、弁護士事務所のホームページのプロフィルにも「逮捕歴」が記されている。
過去を隠すつもりはないのは「徹底的に体を張ってやった」「完全燃焼した」からだという。