ニュース: 生活 RSS feed
【さらば革命的世代】(2)元闘士であることを隠して… (3/4ページ)
■闘争ごっこ
今、好きな政治家はいますか? 彼らにそんな質問をぶつけると意外な答えが返ってきた。
「小沢一郎」「後藤田正晴」…。
小沢民主党代表は日大大学院在籍中の44年に初当選。自民党一党支配を打ち破った“壊し屋”のイメージが支持されているようだ。一方、後藤田元副総理(故人)は44〜47年の警察庁長官。全共闘側からみれば“敵の総大将”だが、メンバーの一人は「敵ながら筋の通った人だった。護憲の姿勢も好きだった」と評する。ただ、彼らの多くは今、積極的に政治活動はしていない。支持政党もない。
中村さんの一件で逮捕された男性(59)は現在、オーディオ部品会社に勤務している。むろん政治活動からは離れたが、墓参には毎年訪れる。「そこで1年を振り返る。手をあわせ、自分は何と怠惰な人生を送っているのかと戒めるような思いを抱きます」
当時幹部だった男性からは「絶対匿名に」と強く言われた。学生運動から離れて就職した後、勤務先に何度も警察からの電話があったからだという。
「政治活動から離れても、会社あてに嫌がらせのように幾度もかかってきた。中身は特になく『○○さんいますか』といった程度。だが、社内ではよく警察から電話がある人だと不審がられた。もう何もないと思いますが、名前が出ること自体に極度の抵抗がある」
男性はさらに「学生運動経験者のなかには『闘争ごっこ』などと簡単に振り返る人がいるが、私はそんな気分にはなれない。むしろ敗北感が強い」とした上で、こう訴えた。
「『闘争ごっこ』なんて言えるのは、デモにちょっこっと参加しただけの連中です。そういう奴は、あの運動を通じて、厳しい場面になるとさっさと逃げる処世術だけを身につけたのではないか」
運動の深淵にいた人ほど沈黙を抱えているのかもしれない。当時、日大全共闘議長として1万人の学生を指揮した男を広島に訪ねた。