外務省の外交機密費(報償費)の一部が首相官邸に「上納」されていた――旧自民党政権がその存在を否定してきた「機密費上納」を、政府が初めて認めた。政権交代が起きたからこそ可能になったといえるが、使い道や金額は明らかにされていない。それはなぜなのか。
岡田克也外相は2010年2月5日の定例会見で、外交機密費が「かつて首相官邸の外交用務に使われていたことが判明した」と発表した。この問題を追及してきた鈴木宗男衆院議員の質問主意書に対する答弁として、閣議決定されたものだ。
外交機密費の上納は、2001年の外務官僚による機密費流用事件を機にクローズアップされ、その存在が野党やマスコミによって指摘されてきたが、当時の森喜朗首相や福田康夫官房長官、河野洋平外相ら自民党政権の幹部はそろって否定していた。
しかし民主党の政調会長時代に機密費の実態の公表を求めていた岡田氏が外相に就任したことで、事態は一変。政府としては初めて、公式に機密費上納の存在を認めることになった。岡田外相は5日の会見で、
「現在は外務省の報償費が総理大臣官邸の外交用務に使われていることはなく、また、今後もありません」
と前政権との「断絶」を強調した。だが、公表したのは「上納があった」という事実だけで、その金額や使途が明らかにされたわけではない。自民党政権の問題だから徹底追及してもよさそうなものだが、それができないのはなぜか?
内閣官房による機密費の使用実態について、ノンフィクション作家の若一光司さんはテレビ朝日の情報番組「スーパーモーニング」で、自民党の官房長官経験者から聞いた話として次のように語った。
「官房機密費の使途は、国会議員が外国に行くときの餞別や外国要人の接待にも使っているが、一部は間違いなく野党にも回っている。野党の国会対策として、国会議員を接待していた」
このような事実を裏付けるような資料は2002年4月、共産党の志位和夫委員長の手で発表されている。志位委員長が公表したのは、宮澤内閣時代の内閣官房機密費の会計記録の一部とされるものだ。具体的な氏名と金額が記されたリストによって、野党議員やマスコミ関係者に対して、100万円もする背広の仕立券やパーティー会費が幅広く配られていた実態が明らかにされた。
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