言葉を選びながら、さりげなくライバルを評価する。興毅が、王座を奪取した前王者・内藤を気遣った。「あの年(35歳)ですごいわ。オレなら100%(ボクシングを)やっていないよ」。
この日、「亀田3兄弟」葛飾後援会が主催する祝勝会に参加した興毅は、平均視聴率43・1%を記録した世紀の一戦の余波で、試合から1週間がたっても、休養が取れないと、苦笑いで告白。そして、内藤との再戦に含みを持たせる発言をした。興毅の今後2試合の興行権を握っている、内藤が所属する宮田ジムに対し、「プロモーターの宮田会長に任せる」と初めて一任する構えをみせたのだ。
王座から陥落した内藤は、先月29日の試合後から、公の場に姿をみせていない。現役か引退かの話し合いを持った宮田博行会長(43)によると、現役続行に前向きな姿勢をみせているという。
WBC(世界ボクシング評議会)の決定では、興毅の初防衛戦の相手は同級暫定王者ポンサクレック・ウォンジョンカム(32)=タイ=になる見込みだが、興行権は宮田会長が保有。興毅が同級王座を統一し、内藤が現役継続を決断すれば、宮田会長が権利を行使し、2度目の防衛戦で両者が再戦する可能性は残されている。
ベルトを守って、内藤ともう一度−。興毅はポンサクレックとの対戦日時が決まれば、フィリピンで強化合宿するプランを明言。内藤戦の1カ月前に、フィリピンでスパーリングを重ね、内藤と似たパートナーを探して日本に帯同させ、王座を奪取した経験を踏まえた考えだ。
「30歳までやるよ。(フライ級の1階級上の)Sフライ級までいかんと」。日本人選手初の3階級制覇が、最大の野望。年齢のカベに立ち向かう内藤の存在は、興毅にとって、得難い“起爆剤”だ。(江坂勇始)