米国の政界・メディアが攻撃するトヨタの電子制御装置はパンドラの箱だ。どの自動車メーカーも完全な自信を持てない部分だ。最近、英語圏では自動車のエンジンをかける時、「ignite」と「boot」という表現を混ぜて使う。自動車の電子比率が35%に達し、コンピュータ-と変わらなくなった。部品の数と重量を減らして燃費を高めるには電子化しかない。しかし機械屋も電子には弱い。高熱と寒波に露出される自動車の電子部品はいつ電磁波の干渉を起こすか分からない。機械的な欠陥とは別に事故が発生しても再現や原因の立証が難しい。ベンツやBMWなど高級車も同じ悩みを抱えている。
ビッグ3などライバル企業も大っぴらにはトヨタを非難しない。反撃の恐れがあるからだ。すでに世界自動車市場は超成熟段階に入っている。技術は平準化され、コスト競争力が生きる道になっている。米国はトヨタの営業利益の半分を占める主力市場だ。決してあきらめることはできない。リコール問題が落ち着きしだいトヨタが大々的な割引行事を行うと予告するのもこのためだ。市場シェアを取り戻そうと準備しているのだ。
リコール問題がトヨタの根本的な競争力を損ねたわけでもない。トヨタには愛知県出身の忠誠心あふれる中間管理者があちこちにいて、現場をリードしている。安定した労使関係と忠誠度の高い顧客は大きな資産だ。負債比率ゼロに加え、蓄積してきた実弾も大量だ。リコール問題でトヨタがふらつくのは事実だ。円高は脅威的で、100万台以上の過剰設備も負担になる。しかしトヨタは危機を克服して成長してきた企業だ。敗戦と石油ショックを乗り越えて一つずつ前進してきた。トヨタはうつむいている時がもっと怖い。世界1位を目の前にしても「日本が自動車で独自発明したのはサイドミラーをたたむ装置だけ」と低姿勢を維持する企業だ。世界メディアの過度な‘トヨタたたき’を眺めながら、安度眩(アン・ドヒョン)の詩「お前に尋ねる」の‘煉炭の灰’を思い出した。「トヨタをむやみに蹴飛ばすな/お前は/一度でもトヨタほどになったことはあるのか」。もう感情的になるのはやめて、トヨタがどのように試練を解決するのかに関心を向ける時だ。
イ・チョロ論説委員
【時視各角】トヨタをむやみに叩くな(1)