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産婦人科7割が出産費値上げの考え 一時金待てない

2010年2月11日11時4分

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 出産育児一時金が医療機関に直接支払われる制度が昨年10月から始まったが、医療機関が健康保険組合(健保)などに申請してから実際に費用を受け取るのに1〜2カ月かかるため、金融機関からの借入金などの負担が増して、お産を扱う病院や診療所の7割が出産費用を値上げしたり、値上げを予定していたりすることがわかった。開業の産婦人科医らでつくる日本産婦人科医会が10日、公表した。

 出産育児一時金(42万円)は従来、妊婦らが出産後に健保などに申請し支払いを受けていた。支払われるまで、妊婦らは40万円以上かかることもある出産費用を立て替える必要があった。そこで、「直接支払制度」を設けて、出産育児一時金を医療機関に直接振り込むようにした。昨年10月から任意で医療機関が導入を始めたが、医療機関の反発も強く今年度末まで全面的な導入は延期されている。

 特に産科が主体の診療所にとって出産費用は収入の大半を占める。資金がないと、1〜2カ月間の支出をまかなうため借り入れが必要となる。その後も、借入金や利子の返済などが続くため、値上げを迫られている診療所は少なくないとみられる。

 産婦人科医会が制度の影響について出産を扱う全国の医療機関にアンケート。約6割の1770カ所から回答を得た。その結果、40%がすでに値上げをしていた。値上げしたがさらに引き上げを検討しているのは8%、近々、値上げを考えているのは23%。

 制度導入と同時に一時金の額が4万円上がったため、その分だけを上乗せした医療機関もあるが、経済的負担軽減などのため数万から十数万円値上げしたところもある。

 7割の医療機関が、直接支払制度により経営上の影響があるとした。診療所でその比率が高く、85%が影響があるとした。42%は借り入れが必要で、うち21%は借り入れしなければ経営困難に陥るとした。病院も含めてすでに535カ所は民間金融機関などから借入金があることもわかった。

    ◇

 北里大の海野(うんの)信也教授(産婦人科)は、「出産を扱う医療機関が不足しているのに、この制度によりさらに減ったら大変だ。制度の問題は、支払いまでに時間がかかり過ぎること。妊娠がわかってから出産までには十分に時間がある。事前に手続きができるようにすれば出産直後の支払いは可能だ」と話す。(大岩ゆり)

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