当社の利益は400万円で十分。それを超える分、880万円は岐阜県にお返しします――。脱・談合で知られる建設会社「希望社」(岐阜市)が、1月にあった同県発注の耐震工事の指名競争入札で、異例の「提案」をして落札していたことがわかった。公共工事の入札は、品質確保のため最低制限価格を設けており、下回ると失格する。同社は、最低制限価格をクリアして落札するためやむなく高い入札価格を提示したといい、今回の提案は最低制限価格のあり方に一石を投じることになる。
同社が落札したのは、岐阜県立衛生専門学校(岐阜市)の南棟西側の4階建て校舎の耐震補強工事。県が公表した工事の予定価格は、5931万5千円(税抜き)だった。
入札では指名業者20社のうち8社が入札を辞退。1月27日に12社が参加して実施された。県が設けた最低制限価格を下回った7社が無効となり、残る5社の中で最も低い5100万円を提示した同社が落札した。
同社は、県の最低制限価格をクリアして落札するため、やむなく高い入札価格を提示したと主張しており、入札に先立って県に出した工事内訳書の表紙に、「失格とならないために5100万円の入札金額を提示するが、当社は利益を確保した上で、4220万円で品質に問題のない工事を施工できる。差額の880万円は県財政のために返還したい」と提案を書き込んだ。
受け取った岐阜県は、前代未聞の提案の取り扱いについて困惑。工事を担当する公共建築住宅課や法務・情報公開課などが検討したが、同社からの工事内訳書の積算に問題はなく、入札価格の整合性も取れているため、落札を決定した。提案については、「返還してもらう理由は見あたらない」(県都市建築部)と説明している。