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【社会】

新幹線停電 パンタグラフ甘い検査 年に2、3回 舟体交換 確認項目なく

2010年2月2日 朝刊

電車から外れたパンタグラフの部品。トロリ線と接触する「舟体」(左)と、アーム部分となる「上枠」=JR東海提供

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 東海道新幹線の停電事故の原因は初歩的な人為ミスだった。一日、東京都内で記者会見して停電の経緯を説明したJR東海の幹部ら。一九六四年の開業以来「死亡事故ゼロ」の安全神話を揺るがしかねない事態を招き、冒頭「(乗客に)不自由な思いをさせて申し訳ありません。今後は作業記録を改良し万全を期したい」と深々と頭を下げた。 

 会見には、新幹線鉄道事業本部の長田豊副本部長と五十嵐一弘車両部長が出席。緊張した面持ちで「最悪の事態には至らなかったが今までにない事故。しっかりした対策を取りたい」と述べた。

 人為ミスが発生したのは、電気を送る架線と接するパンタグラフの重さ十二キロの「舟体(ふなたい)」の交換作業でだった。事故が起きたこだま659号は、パンタグラフがある6号車と12号車のいずれの舟体にも溶けた痕跡が見つかり急きょ交換。6号車の舟体は正常にボルトが取り付けられていたのに、12号車には取り付けた形跡がなく、付け忘れと判断した。

 交換作業は大井車両基地(東京都港区)の車両所で、JR東海の入社十年と三年の作業員二人、経験三十年のベテラン確認役の計三人で行われた。舟体の交換は年二、三回される程度で極めてまれな作業だ。このため「作業の分担表にはボルトの締め付けなどのチェック項目はなく、部品の数量も確認していなかった」という。

◆停電直前 ボルトなし1000キロ走行

 停電事故を起こしたこだま659号は事故直前に舟体のボルトがないまま東京−新大阪間の往復約千キロを走行していたことが、JR東海の調査で分かった。外れた舟体や架線を切断した舟体を支える上枠が沿線の市街地に飛び込み、周辺の住民がけがをする危険もあったという。

 同区間では最高時速二百七十キロで走行。同社は「舟体がトロリ線と上枠の間にサンドイッチ状に挟まれていたため、たまたま外れなかったのでは」と推測する。

 事故現場の横浜市神奈川区羽沢町付近では時速百八十キロで走行していた。

◆念入りな点検必要

 新潟大大学院自然科学研究科の谷藤克也教授(鉄道工学)の話 パンタグラフは走行中に壊れると代わりが利かない重要な部品なので、念入りにチェックすべきだ。めったにない交換作業であっても万全な態勢を取り、作業完了後もチェックすることが大切だ。

 

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