東海道新幹線の架線が切れて停電し、約14万9千人に影響した事故について、JR東海は1日、直前に現場を通過した車両の集電装置「パンタグラフ」の部品が外れ、架線を切断したとみられると発表した。事故2日前にパンタグラフの部品を交換した際、4本のボルトをすべて付け忘れたのが原因。この車両は事故を起こすまで乗客を乗せて東京―新大阪間を1往復余、約1070キロ走っていた。
JR東海によると、この車両は1月29日の事故のとき東京発名古屋行き「こだま659号」として運行されていた16両編成の300系新幹線。パンタグラフ2基のうち12号車の1基が大破していた。
パンタグラフは架線に触れる長さ約1・9メートルの「舟体(ふなたい)」と、これを支えるアーム部分をステンレス製ボルト(長さ3センチ、直径8ミリ)4本でつなぐ構造だが、壊れた1基はボルトが4本ともなかった。
同車両は27日深夜から翌日未明にかけ、同社大井車両基地(東京都品川区)の作業所で、摩耗した舟体を交換。その際にボルトを付け忘れたとみられる。その結果、横浜市内を走行中に舟体が落下。重しを失ったアームがはね上がり、架線を支える金具と接触して、高圧電流の流れる「補助吊架(ちょうか)線」が切れたという。
舟体の交換は社員3人で行った。うち2人が作業し、約30年の経験を持つ車両技術主任がボルトを付けたという確認のマークを作業個所付近に付ける手順になっていたが、12号車にだけ付いていなかったという。
この事故では停電が約3時間20分に及び、上下計56本が運休、190本に遅れが出た。品川―小田原の駅間では上下5本が立ち往生し、約3100人が車内に閉じこめられた。東京駅では乗り継ぎができなかった乗客が休憩用の車両で夜を明かした。