ストレート方式4石直結AMラジオ“NR4K”

new radio for kids' workshop

Cosy MUTO, JH5ESM
First released on 15 Nov., 2008
Revised on 30 Nov., 2008


Introduction

エレキジャックNo.2において「初歩のラジオ製作」という記事を執筆させていただきました. 当該記事では3端子のAMラジオICであるLMF501Tと2SC1815によるイヤホン駆動回路で構成しておりましたが,LMF501Tは既に生産が終了しており,将来入手が困難になることが予想されます.

NR4K(New Radio for Kids)はLMF501Tに替わる回路として設計したもので,小学生向け工作教室の教材として本年度から運用しています.


回路の説明

NR4K schematic
図1 NR4K回路図(PDF版はこちら

NR4Kの回路を図1に示します.4石直結のストレート方式です.普通,4石ラジオの組立キットですとスピーカを鳴らすものが多いですが,NR4Kはヘッドホン(イヤホン)専用ラジオです.

同調回路は後述するループアンテナと330[μH]インダクタの直列接続とトイレットペーパ芯にアルミホイルを貼って作ったバリコンで構成しています.
もちろん,バーアンテナとポリバリコンとか,並四コイルとエアバリコンの組合せでも構いませんので,お好みに応じて選択して下さい.

トランジスタラジオの場合,同調回路はアンテナコイルのタップもしくは二次巻線を回路に接続するのが通例ですが,NR4Kでは(工作教室教材であるため複雑な機構はNGですので)同調回路を直接トランジスタで受けるようにしています.
このため,初段は高入力インピーダンスとなる差動増幅回路を採用しました(Q1, 2).

初段出力はシングルエンドで取り出し,エミッタ接地のQ3によってもう一段,高周波増幅します.

Q4でさらに増幅していますが,動作点は負荷線の中点ではなく電源電圧付近に偏っています.また負荷インピーダンスが低いので,入力信号に対してほぼ半周期しかコレクタ電流が流れず,半波整流動作をします.
この半波整流電流をヘッドホンインピーダンスと0.1[μF]で積分することで振幅変調波の包絡線のみを取り出し,ヘッドホンを駆動しています.

ヘッドホンは100円ショップで売っているステレオヘッドホンを想定していますし,それで十分です. 直流電流を流しますので,いいヘッドホンは使わない方が無難でしょう.
ヘッドホンジャックもステレオ用を用いますが,アース端子は用いず,左端子をQ4のコレクタに,右端子を電源ラインに接続します. こうすることで,モノラルイヤホンも(感度は下がりますが)利用することができます.

電源は3[V]です.無信号時消費電流は2[mA]程度ですので,マンガン電池で十分です.1.5[V]でも動作可能ですが,感度は悪くなります.
Q1 〜Q3の電源ラインは100[Ω]と100[μF]でデカップリングをします.これがないとモーターボーティング発振を起こしますので,省略しないで下さい.


製作

parts placementbreadboard photomaking loop antenna
(a) 実体配線図(b) ブレッドボード完成写真(c) ループアンテナ製作
図2 製作状況(クリックして拡大)

回路は小型ブレッドボード(EIC-301)上に組みましたが,ユニバーサル基板やラグ板でもよいでしょう.製作の状況を図2に示します.

ブレッドボードに組む場合,積層セラミックコンデンサはあらかじめリード線を5[mm]程度に切っておきます.こうすると,Q4のエミッタ抵抗をその上に立体配線することができます.

バリコンはトイレットペーパの芯2個(うち1個は同軸構造とできるように一度切り開いて直径を少しつめる)にアルミホイルを貼り付けたものを使用しています.
製作要領についてはエレキジャックNo.2の拙著記事及びサポートページをご覧ください.

ループアンテナはティッシュペーパ空箱の上面を切り取り,そこから十字枠を作りました.空箱の長辺が枠の長さとなるようにしますが,そのままでは強 度が足りず線を巻くと大きくたわみますので,二つ折りにしてテープで留めておきます.枠の先端に切り込みを入れ,0.32[mm]のポ リウレタン被覆導線あるいはラッピングワイヤを10回巻きます.線材は約8[m]必要です.出来上がったら割り箸を貼り付けます.以下,ステップごとの製作写真と簡単な説明です;

Step 1:ティッシュペーパから箱の上の面を切り出します.必ず長い辺を残すように切ってください.
Step 2:切り出した面から2本の細長い帯を作ります.
Step 3:机の角などを使って,作った帯を二つ折りにしテープ留めします.
Step 4:十字に組み合わせてホチキス留めしてループ枠を作ります.
Step 5:枠先端にV字型の切り込みを入れます.
Step 6:枠のアームの一本に,0.5〜0.8[mm]程度の穴を二つ開けます.
Step 7:8[m]長,0.32[mm]径のラッピングワイヤまたはポリウレタン被覆導線(UEW)を用意し,その一端を40[cm]くらい穴の一つに通しておきます.
Step 8:ループ枠に10回巻きます.
Step 9:巻き終わったら,線の残りをもう一つの穴に通します.
Step 10:先端処理が終わったら,線が外れないように枠の先端をテープ留めし,割り箸を脚として貼り付けます.

ループ枠の素材としては他に様々なものが考えられますので,工夫して下さい.
なおこのループアンテナのインダクタンスは約60[μH]しかなく,中波帯の同調には足りません.そこで330[μH]のインダクタを直列に接続しています.直列接続するインダクタの値は,お住まいの地域の中波放送局の周波数とバリコンの出来具合で加減して下さい.

ケースはループアンテナ枠を切り出したティッシュペーパ空箱の本体部分を使いました.上面を切り出したことで壊れやすくなっていますので,テープ等で補強しておきます.

NR4K photograph
図3 完成写真


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