2010年2月11日0時15分
品質を企業イメージの最重要テーマに掲げてきたトヨタ自動車が、品質問題で苦しんでいる。欧米でアクセルペダルが戻らない不具合が相次ぎ、エコカーの代名詞となったプリウスでは、ブレーキに関するトラブルが発生した。
詳しい原因究明は、第三者機関の調査を待つとして、いずれも自動車の基本性能である「走る」と「止まる」にかかわる分野で、苦情が相次いだ。これは自動車メーカーにとって、存立にかかわる異常事態だ。そして、そのいずれもが、ハイテク技術にかかわる問題をはらんでいる。
「走る」に関連するアクセルの問題は、フロアマットがペダルにかぶさったことや、室内の露滴の影響でペダルの戻りが悪くなったことが、直接の原因とされる。
ただ、今のアクセルは、踏み込んだペダルの状況をセンサーが読み取り、電気信号に変えてエンジン回転を制御する。ペダルが異常な位置で固定されると、異常な信号が送り続けられ、暴走につながる可能性は十分に考えられる。しかし、ペダルの異常を判断する仕組みや、加速中でもブレーキを踏めばアクセルが切れる仕組みがあれば、事故は防げるはずだ。
「止まる」に関連したプリウスのブレーキ問題は、ハイブリッド車ならではの回生ブレーキと、タイヤのロックを防止するハイテクブレーキの作動に原因があるようだ。
新技術の採用が、燃費性能や安全性能を高めたことは、誰もが認める。だが、ハイテク化を進める際、ローテクの時代に当たり前とされた性能や機能、運転感覚をないがしろにすることは危険だ。設計の根幹に、消費者の過去の経験に対する配慮が求められる。(窯)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。