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診療報酬改定:再診料統一 勤務医の待遇改善狙う 開業医の「残業」には手当

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR 政治>

 2回目以降の外来診療時にかかる再診料について、厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)は10日、4月から病院(200床未満)、診療所(開業医)とも690円で統一することを決めた。病院は今より90円引き上げる一方、診療所を20円引き下げ、疲弊ぶりが指摘される病院勤務医の待遇改善を図る。一方診療所でも、24時間患者の対応をするなど、地域医療を支える医療機関は減収とならないよう加算を設ける。結局、厚労省から狙い撃ちされたのは、定時に閉院し、休日や夜間は診療しない都心のビルに入居するような「クリニック」だ。【佐藤丈一】

 収入が多いとされる開業医の取り分を削り、病院勤務医に回す--。開業医の再診料引き下げによる価格統一は、かねて厚労省が目指していたものの、開業医を中心とする日本医師会(日医)やその支援を受ける自民党の意向もあり、踏み切ることができなかった。しかし、政権交代後、厚労省入りした政務三役は中医協から日医の代表委員を外し、開業医の再診料引き下げに布石を打った。

 とはいえ、新たな中医協委員にも開業医はいる。10日の中医協で、学者ら公益委員が690円での再診料統一案を示した際も、診療側委員は「結論ありき。許容できない」と退席し、議論が中断する一幕もあった。

 結局、診療側委員が反対できなかったのは、開業医の引き下げ幅を20円にとどめたためだ。それでも、病院は90円アップで約180億円の増収になる一方、開業医は約200億円の減収となる。

 さらに10日は開業医を説得する案として、(1)かかりつけの患者からの電話に24時間対応できる体制を整えている(2)医療費の明細書を無料で発行できる--開業医については、再診料に加算する制度も示された。(1)(2)とも実施すれば、事実上再診料の現行水準が維持されるようになっている。

 厚労省は、こうした仕組みにより、「残業」をしなかったり、患者へのサービス意識に欠ける開業医が減収となるよう意図している。同省は、夜間や休日、病院の外来に訪れる軽症患者の足を開業医に向けさせることで病院勤務医の負担軽減を図る意向だ。

 このためにも、24時間体制で頑張る開業医の意欲をそぐわけにはいかないという事情もある。

 しかし、診療報酬全体の伸びが0・19%と低いうえ、入院費を大幅にアップさせるという新政権の考えもあるため、外来診療充実というにはほど遠い内容となっている。

 10日は患者が医療機関で、リハビリや傷の手当てなどを受けず、問診だけだった場合などに上乗せされる「外来管理加算」(520円)の扱いも決着した。前回改正で、問診が5分を超えないと加算ができないようになった「5分ルール」について、医療関係者は強く廃止を求めていた。今回、5分ルールは廃止されたものの、投薬目的で症状を確認するだけの「お薬受診」では加算を認めないという新たな条件も設けられ、開業医の間には「減収は必至だ」という不満が出ている。

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 ■ことば

 ◇再診料

 外来で2回目以降の診療時に算定される。現在、病院(200床未満)が600円なのに対し、診療所は710円と手厚く、収入の1割を占める。外来患者を中心に診るのが開業医、入院や手術などは病院--という役割分担を明確にするため、1985年の診療報酬改定時に病院より開業医の単価を高く設定した。より入院機能を重視する200床以上の病院には、再診料はない。4月からの価格統一で、医療費の窓口負担割合が3割の人は、再診料負担が診療所なら6円安くなる一方、病院では27円高くなる。

毎日新聞 2010年2月11日 東京朝刊

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