小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体を巡る事件で起訴された石川知裕衆院議員が離党の意向を固めたのは、内閣支持率低下に苦悩する同党内で離党を求める声が高まったためだ。同党は石川議員の「自発的な離党」により、党と小沢氏に対する反発を封じ、一件落着に持ち込む戦略を描くが、石川議員の議員辞職を求める野党側が今後も追及を続けるのは必至で、同党には厳しい状況が続きそうだ。
石川議員は9日夜から断続的に党幹部や小沢氏の側近議員らと相談し、12日にも離党する方針を固めた。党幹部らによると石川議員は「いろいろとご迷惑をおかけしてすいません」と話していたという。ただ石川議員は、議員辞職はしない考えも伝えた。
9日の北海道帯広市での記者会見では、離党に否定的な見解を示した石川議員だが、枝野幸男行政刷新担当相が10日の就任記者会見で「それぞれの節目節目でしかるべき対応をすると期待している」と述べるなど、党内にも自発的離党を求める声が強まっていた。
石川議員が何の行動もとらなければ野党側の反発は強まり、予算審議への影響も深刻化する。「離党の必要はない」と擁護論を展開してきた小沢氏側近からも「小沢氏の求心力にも悪影響が出かねない」との懸念も出始め、党幹部も「週内に落ち着かせないとならない」と早期決着を急ぐ考えを示していた。鳩山由紀夫首相は10日、首相官邸で記者団に「冷静にいろいろ考えているのではないか。やはり起訴された事実は重い」と語った。
民主党は、逮捕・起訴された石川議員を離党させることで、一連の「政治とカネ」の問題に幕引きを図りたい意向だ。しかし、自民党の大島理森幹事長は10日、党本部で記者団に「(石川議員は)辞職に値する事案だと気がつくべきだ。議員辞職勧告決議案に民主党として堂々と臨むよう首相に申し上げたい」と述べ、決議案の国会採決を改めて要求した。
与党内でも依然社民党は石川議員に衆院政治倫理審査会での説明を求めている。また、小沢氏についても、同党の重野安正幹事長は10日の記者会見で「疑問を持っている国民の数は圧倒的に多く正面から向き合って説明をすべきだ」とさらに説明責任を果たすよう要求している。事態は民主党の思惑通りには進んでおらず、問題収拾には時間がかかりそうだ。【高山祐】
毎日新聞 2010年2月11日 東京朝刊