【第113回】 2010年02月10日
小沢幹事長問題ではっきりした
メディアと国家権力の危険な関係
「女性秘書監禁事件」を
新聞・テレビは一切報じず
筆者は、「週刊朝日」誌上で、3週にわたって、何の罪もない女性秘書の母親が、検事による違法な取調べを受けて、保育園の迎えにさえいけなかったという卑劣な検察の行為を書いた。
ところが、この検察の犯罪行為を記者クラブメディアは一文字も一秒も報じていない。幼い子供を持つ母親への卑劣な行いだけで、普段ならばワイドショーが飛びつきそうなネタであるのにそれはなぜか。
それは、検察批判がすなわち「共犯関係」にある記者クラブの自己批判につながるからだ。ついでに言えば、その報道によって、11年前から記者クラブ批判を繰り返している筆者の存在を知らせることにもなり、結果、自らの首を絞めることになることもあるのだろう。
つまり、この「女性秘書監禁事件」はこの世に存在しないことになっているのである。してしまえばいいのだ。
国家権力の驕りとそれを支えるマスコミの同業者に対して、本来のジャーナリズムはどう立ち向かえばいいのか。
世界中のジャーナリストたちには、不健全な国家権力と戦ってきた歴史がある。先進国でも、発展途上国でもそれは変わらない。
たとえばロシアでは、過去5年間で100人以上のジャーナリストが、国家権力によると思われる「暗殺」によって命を落としている(「国境なき記者団」調べ)。
世界中のジャーナリズムが、国家権力の横暴に立ち向かってきた中、日本の新聞・テレビなどで構成される記者クラブだけは、一切、この種の権力報道を行ったことがない。
この3週間、筆者の報じた検察による女性秘書への「違法捜査」は、多くの記者たちの知るところになっているにもかかわらず、繰り返すが、ただの一文字も一秒も報じられていないのだ。
記者クラブには国民の側ではなく、国家権力である検察側に寄り添う習慣が染み付いている。
世界中のジャーナリストたちが捜査権を伴った国家権力との戦いによって、命を落とす中、日本の記者クラブ記者だけは「出入り禁止になるかもしれない」という信じがたい理由だけで、「真実」から逃げている。
国家権力と寄り添った報道は、大本営発表と同様、国家と国民を不幸の淵に連れて行く。
それは誰より、日本の新聞記者たちが一番知っていることではないのだろうか。
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著者プロフィール
- 上杉隆
(ジャーナリスト)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「宰相不在 崩壊する政治とメディアを読み解く」「世襲議員のからくり」「ジャーナリズム崩壊」「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」など著書多数。最新刊は「民主党政権は日本をどう変えるのか」(飛鳥新社)。
この連載について
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