ご主人様と一緒

ビシッ、ビシィッと、聞いているだけで身が竦むような打擲音が響く。


唸りを上げて僕の身体に打ち付けられる鞭は、とても強い力にも拘わらず、完全に勃起した僕のペニスを萎えさせることは無かった。


「んふぅっ…、おふ、はうぅんっ……!!!」


ボールギャグを咥えた口の端から絶え間無く不明瞭な喘ぎと涎を垂れ流し、僕は吊された体勢のままくねくねと身をよじる。


そんな僕を窘めるように、また鞭が振り下ろされた。


「んっふうぅううっ!!」


衝撃にぴんっ、と身体が張り詰める僕の両乳首にはリング状のピアスが付けられ、そこから錘の付いた細い鎖が下がっている。


重みで絶えず下に引っ張られる乳首はぷっくりと赤く腫れ、時折そこに鞭が当たると、痛みにボロボロと涙が溢れた。


だが、それすらも、僕にとっては快楽なのだ。


「ふうっ、んふぅうっ……」


「……随分と悦さそうだね、ミチル。これがお仕置きだって分かってるのかな?」


そう言って、乗馬用の細くしなる鞭を振り上げるのは、僕のご主人様だ。


端正な顔が、今は怒りに歪んでいる。


それが僕の所為だということも、僕が今お仕置きを受けているということも良く分かってはいるけれど、僕は例え痛みしか与えられないとしてもご主人様に触れられれば勃起してしまう浅ましい身体の持ち主なのだ。


おまけに、僕のアナルにはご主人様が僕の為に買って下さったアナルパールが深々と突き刺さっている。


ぐりぐりと回転するそれに前立腺を刔られては、勃起するなという方が無理だ。


ご主人様もそれは良く分かっている筈で、それでも僕を嬲るのを止めようとはしない。


そんなご主人様の言葉に、僕は更に煽られてしまうのだった。


「浅ましい身体だな。私だけでは足りない筈だ。

あの男は優しかったか……?」


「んんっ!んんぅっ……!」


違う、誤解ですと言いたいのに、口枷が邪魔をして言葉にならない。


そんな僕を冷たく見遣り、ご主人様は更に僕を追い詰めるべく、新しい器具を取り出した。


何をされるのかと身体を強張らせてご主人様の手元を見れば、そこには銀色に光るリングがある。


それを見て、自分がこれからどうなるのか悟った僕は、必死で身を捩って避けようとした。


が。


「んっふぅうおぅっ!!!」


一際強く鞭で打たれ、硬直している間にリングは難無く僕のペニスの根本に装着されてしまう。


更にウルセラルバイブがズブズブと尿道を犯し、引き攣れるような痛みと快楽に、僕の身体はぶるぶると震えた。


「どうだミチル、気持ち良いだろう…?お前の大好きなウルセラルバイブだ、直ぐにイクのは勿体ない。たっぷり楽しみなさい。

私が帰って来るまでな……」


その言葉に、僕は目を見開いた。


『私が帰って来るまでな』


という事は、僕は…、僕は……


「さて、残念ながら私は片付けなければいけない仕事が残っている。

ミチル、良い子にしているんだよ」


そう言って、ご主人様はウルセラルバイブのスイッチを入れると僕に背を向けてしまう。


「ん――――!!!!んんうっ!!んふぅううっ!!!」


ペニスを内側から蹂躙される衝撃と、このままの状態で放置されるという事実に泣き叫んでも、ご主人様は振り返ってはくれなかった。





事の始まりは、僕が下校途中に寄り道をしたことだった。


たまたま読みたい本が発売されていたのを人づてに知り、何時もなら真っ直ぐ帰るところを珍しく寄り道したのだ。


そこの本屋で、事件は起きた。


目当ての本を手に取り、他にも何か良い本はないだろうかと見てまわっていた僕は、奥まった場所にあった原書コーナーに行き着いた。


そういえば、英語の授業で一冊読めと言われたな、なんて思いながら手に取った本をパラパラとめくっていると、不意に隣に誰かが立っていた。


大して気にも止めていなかったけど、次の瞬間、僕は後悔する。


隣に立った人物が、いきなり僕のお尻を鷲掴んで来たのだ。


驚いて固まってしまった僕の身体を、その人は好き勝手に撫で回す。


しまいにはズボンのチャックを下ろして、手を突っ込んで来たのだ。


ぐにぐにと下着の上からペニスを揉まれて、吐き気がした。


そのまま下着の中まで入り込もうとする動きを察して、漸く僕は正気を取り戻し、持っていた本を投げ出して店を飛び出した。


だが、それだけでは済まなかった。


僕に痴漢を働いた男は、あろうことか僕を追って来たのだ。


そして、路地裏に連れ込まれそうになっていたところを偶然通り掛かったご主人様に目撃され、そのまま助けて貰ったから良かったようなものの、結果ご主人様に誤解され、怒らせてしまった。


何度も車中や、帰って来てからも誤解だと訴えたけど、ご主人様は聞き入れては下さらず、泣いて縋る僕を吊して口枷を嵌めて、後はもう為すがままだ。


仕事だと言って、部屋を出て行ったご主人様。


一体どのくらいで戻って来て下さるのか。


全く分からないけれど、僕はただ、悶えながら待ち続けるしか無かった。









どれほどの時間が経ったのか。


ペニスとアナル両方から与えられる刺激に、僕の下半身はもうぐずぐずだ。


意識はとうに朦朧として、目の前のものすらはっきり見てとる事も出来ないのに、尿道と前立腺両方を苛む苦しい程の快楽で気を失う事もかなわない。


戒められたペニスは赤黒く腫れて、じんじんと痛みを訴えていた。


このままでは、きっと使い物にならなくなってしまう。


それでも、ご主人様は僕を捨てないでくれるだろうか。


ご主人様、ご主人様……。


酷くても良い。


痛くても、良い。


長時間放置された僕は、今、全身でご主人様の熱を求めていた。






ガチャ、と、ドアの開く音が聞こえる。


ご主人様を求め続けた末の幻聴かとも思ったが、どうやら違うようだ。


「ん、う……」


ご主人様が、戻って来てくれた……!


涙でぼやける視界でははっきりとその姿を見ることは出来ないけれど、ふわりと漂って来たご主人様の香りに僕は心底安堵した。


「ああ、可哀相に、そんなに泣いて…。辛かったかい、ミチル……」


そう言ってご主人様は僕の口枷を外してくれる。


「ふぅ…、あ…、ごしゅじ、しゃま……、ゆうしてぇ……」


長い間押さえ付けられていた舌は上手く動いてはくれなかったけど、ご主人様は僕の言いたい事を分かってくれたようだった。


「赦して、か……。本当に可愛いねミチルは。

でも、そうだね、それじゃあ…、そのアナルパールを、自分で出してごらん。それが出来たら、リングも手枷も外してあげよう」


出来るだろう、と言われ、僕はただ頷く。


そうして、必死に力を込めて未だ前立腺を刔る玩具をひり出そうとした。


「んはっ!ハッ……、ひぃんっ…!!」


ポコッ、と一つめの球が出て来る。


たったそれだけのことなのに、僕はもう肩で息をしていた。


「ほら、早くしないと何時まで経ってもそのままだよ」


「きひぃいぃいっ!!!かはっ、はぁああっ……」


愉しそうに僕を見詰めながら、ご主人様が僕のペニスに突き刺さったウルセラルバイブをズクズクと抜き差しする。


その瞬間、お尻に力が入り、一気に球が三つ抜け出た。


「あはっ、はあっ、んはぁっ……!」


あと少し。


あと少しで終わる。


そう思って再び力を込めて球を出す。


「ああ……」


出る。


全部出るぅっ……!


だが、その瞬間。


「あっひゃああぁああっ!!!!」


アナルパールの取っ手を無造作に掴んだご主人様が、抜けかかっていたそれを、勢い良く再び僕のアナルに突き刺してしまったのだった。


「あ…、ああぁあ……」


「どうしたんだミチル。ほら、早くしなさい」


そう、愉しそうに言うご主人様の目は、決して笑ってはいなかった。


未だ怒っているのだ。


僕を、赦してはくれないのだ。


嫌われて、しまったのだろうか…。


僕が、浅ましい身体だから。


無理矢理とはいえ、見知らぬ男にこの身体を触らせてしまったから。


そう思うと、次から次へと涙が溢れて来た。


「ふ…、うぇ…、ひぃっ…く…」


みっともないとは思うけど、どうしても鳴咽が止まらない。


僕の顔は、涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃだった。


「………全く、手の掛かる…。

ミチル、泣くのは止めなさい。少し虐め過ぎてしまったかな…」


「うふっ、う…、ごめ、さい…、捨てな、でぇっ……!」


「何を馬鹿な事を…。こんなに可愛いミチルを、捨てる筈が無いだろう。

だからミチル、もう一度頑張れるね?」


そう言って、ご主人様は爪の先でカツンとアナルパールを弾く。


捨てる筈が無い、そう言われただけで僕の涙は自然に止まり、ご主人様に向かって一つ頷くと、再びお尻に力を込めた。


「んんっ、はぁうんっ……、はひっ!」


ズリュズリュと、パールが前立腺を擦って抜けて行く。


一つ一つが出る度に入り口がぱくぱくと開閉して辛いが、休むと余計に苦しくなるのが分かっていたから、僕は残りを一気にひり出した。


「んはっ、はあっ!はあっ!ハッ……」


ゴトッと落ちた玩具を足で蹴飛ばし、ご主人様が僕の背後に回る。


未だ荒い息を吐く僕をそのまま抱きしめて、そして


「あがっ!きひいぃいいっ!!!!」


「っ、相変わらずきついな……」


アナルパールなんかより、ずっと太いご主人様のペニスがいきなり僕を貫いた。


間髪入れずに律動が開始され、僕は涎を垂らしながら壊れた人形みたいに揺さ振られる。


待ち望んでいた確かな熱を与えられて僕のペニスは射精寸前まで追い詰められていたけど、未だ戒められたままの状態ではそうもいかなかった。


「ごしゅじ、さまぁっ!取って、コレ取ってぇえっ!!あぁあんっ!」


「ははっ、もう出したいのかミチル…!堪え性の無い身体だね」


言いながら、ご主人様のペニスがぐりぐりと前立腺を刔る。


余りの愉悦に飛びそうになりながらも、僕は譫言のように赦しを乞うていた。


「あっ、あっ、ごめ、なさっ…!僕、淫乱だからぁっ、ご主人様のおちんちん悦すぎて、も、ダメェッ……!」


「ハッ、可愛いミチル…!取ってあげるから、いっぱい出しなさい……!」


そう言って、ご主人様はリングを外し、ウルセラルバイブも一気に抜いてくれた。


「はひっ!らめぇっ…!僕、イッちゃうっ!ご主人様に犯されて、精液出ちゃうぅっ……!

あ、ああぁあぁあ――――!!!!」


ビュルビュルと勢い良く吐き出された精液は、床に白い水溜まりを作る。


それを見て微かに笑ったご主人様は、びくびくと跳ねる僕のペニスの先端を汚す汁を指先で掬い、僕の口に突っ込んだ。


「んぐっ、ん、ちゅ…」


「可愛い、淫らなミチル。まだまだ可愛がってあげるから、いっぱい出そうね」


そう、言いながら、ご主人様は更に強く僕のアナルを穿ち続ける。


結局僕は夜が明けるまで、ご主人様に犯され続けたのだった。






END






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