新しい制服U
その日、やけに店長の機嫌が良かった。
返却された商品をチェックする時も、新しく入荷した玩具を試用する時も、どことなく浮かれていて、何か良いことでもあったのかと訊いてみれば。
「あ、分かる?ずっと欲しかったものが漸く手には入るんだよー!」
と、弾むように言うのだ。
その店長の顔は本当に嬉しそうで、見ているこっちまでうきうきして来そうだった。
今の僕にそんな余裕があればの話だけど。
「そんな事よりほら、今はこっちに集中してよ悠君」
「あっ、はぁあんっ!や、てんちょ、ダメェッ……!!」
店の入り口に背を向けてカウンターの上に座った僕の足は大きく広げられていて、その中心、可愛らしいミントグリーンの女性用下着に包まれた股間にはごく弱い振動を繰り返すマッサージ器が宛てられている。
嬲られ続けたそこは狭い布地の中でしっかりと勃起し、溢れた汁で淡い色の生地を色濃く汚していた。
「悠君は本当に電マが好きだよねえ。
こっちは?もう大分解れてるけど……」
そう言って店長が手を延ばした尻の穴には既に小型のバイブが埋め込まれていて、胎内で温められたローションがたらたらと流れカウンターを汚している。
クイッと下着を片側に寄せられてそこが外気に触れた瞬間無意識に締めてしまったのか、ぷちゅ、という音を立てて飛び出しかけたバイブを、店長の指が摘んで一気に引き抜いた。
「ひゃぁあんっ!」
「はい、悠君降りて、向こう向いて」
中の物を抜かれた衝撃で軽くイッてしまった僕を引きずり降ろして、カウンターに上体を凭れるように向きを変えられる。
そのまま店長の方に腰を突き出すような体勢にさせられて、慌てた僕が何かを言う前に、剥き出しになった僕の尻に熱く弾力のある物が宛てられた。
「やっ、てんちょ……!だ、め、…あ、ああっ…!」
制止する僕に構わず、店長のペニスが一気にずぶずぶと尻の穴に挿入されてしまう。
それだけで、さっきから弱い刺激しか与えて貰えて無かった僕の身体は限界を迎え、呆気なく下着の中に粘着いた汁をびゅくびゅくと吐き出してしまった。
「あ―――――っ!!あっ、あっ、ぃひぁああっ!!!」
「っあー、ダメだって悠君、そんなに締めたら、僕直ぐイッちゃうから」
そう言いながら、店長は大きく腰を動かして、ビタンビタンと打ち付けられる度に僕のペニスがカウンター下の棚にぶつかる。
その刺激に萎えていた筈の僕のペニスが再びむくむくと頭を擡げ始めて、ああ、またイッちゃう、と考えていたその時、店の入り口の自動ドアが開いた。
「あっ、やっ、てんちょ…、お客さま、があっ……!」
「ああ、いらっしゃいませ。
ほら、悠君も」
「あっ、あっ、いらっしゃ、ましぇえっ……、ああっ!」
「ちょっと待ってて下さいねー。僕直ぐイキますから、っと」
ぐぷぐぷと僕のお尻を抉る店長にそう言われたお客さんは、最初は固まってたけど段々と興奮した様子で近付いて来て。
そのぎらついた視線に煽られた僕の穴が自分でも分かる程にひくひくと蠢いた瞬間、背後の店長が小さく呻いて僕の穴の中に射精して、その衝撃で僕もまた白いお汁をびゅーびゅーと飛ばしてしまった。
「ンンッ、ン―――!」
ひくんひくんと身体が射精後の余韻で痙攣するが、それに浸る間もなく店長の萎えたペニスが引き抜かれ。
「悠君、ちゃんと後始末しないと」
「ん……はい……」
店長に助けられてカウンターの上に登った僕は未だ直ぐ側で食い入るように見詰めるお客さんに向かってお尻を突き出すと、以前店長に教えられた通りの言葉を口にした。「あの…、僕の、ザーメンでいっぱいのケ、ケツマンコをっ…、お客さまの指で綺麗にし…っああぁあっ………!」
グチュ、ジュププッ
どうやら興奮も頂点に達したのか、僕が言い終わる前にお客さんの節くれだった太い指が一気に二本もねじ込まれる。
「あ――っ!おきゃ、さまぁっ!は、激し……!!」
V字に開いた指でぐりんぐりんとかき回されながら、僕は早くも三度目の勃起をしていたのだった。
◇◇◇◇◇
初めて電気マッサージ器での絶頂を知り、同時に犯される悦びを身体に教え込まれてから早数週間。
なし崩し的に制服がワイシャツと女性用下着に決まってからというもの、僕が店長やお客さんにセクハラされる回数が格段に増えた。
背後からマッサージ器で悪戯されたり、いきなり勃起したペニスを押し付けられたり、お尻の割れ目に顔を埋められたり。
正直まともに仕事にならない日も多数あって、僕はかなり困っていた。
(まあ、それで興奮しちゃうのも確かなんだけど……)
それに、男同士のセックスを覚えたばかりの僕はセクハラを働く人達を上手くかわす事も出来ない。
どうやら店長が睨みを利かせているのかお客さん全てに襲われたりする訳では無いけれど、それでも店長の赦しを得ている人は何人かいる訳で。
バイトに来る度に何度も射精させられては、身体が保たないのだ。
(……それに、手を出されないからって、これじゃ、ねぇ……)
そう、何も襲われるばかりがセクハラではない。
今も棚の整理をしている僕を背後からじっとりと舐め回すように見詰めているお客さん達の視線も、十分セクハラに値すると僕は思うのだ。
(………疲れる……)
自然と淫靡な雰囲気になってしまった店内で、はあ、と気付かれない程度に溜め息を吐く。
だが如何せん僕だけの問題では無いのでどうにもならず、少し早いけど休憩でも貰おうかと思っていると、背後から店長が「悠君!」と呼ぶ声が聞こえた。
その何時にない浮かれた雰囲気を不思議に思って振り返ると、なんとそこには―――
「っ!!なっ、何でこんなところに、いっ、いいい犬がっ……!!!」
そう、店内の奥の奥、衝立で隠されたいかがわしいゲイ専用アダルトコーナーの入り口に喜色満面で立つ店長の脇には、大型という言葉すら生温い程大きな、超大型犬がのっそりと立っていたのだ。
「凄いでしょう!グレート・デンって言う犬種なんだけど、こんなに大きいのにとても大人しくてお利口なんだよ」
ほら、触ってごらんとニコニコ笑う店長に、僕は無言で首を横に振るのが精一杯で。
実は、小さい頃近所の犬に追い掛けられた事がトラウマになっていて、僕は犬が、それも大きければ大きい程怖くて仕方ないのだ。
そんな僕に漸く気付いたのか、店長がおや、という顔をして此方を見ていたけど、何故か次の瞬間、ニヤリと不気味な笑みを浮かべて……。
「悠君、そんなに怖がらなくても大丈夫だよー。ほら伝次郎、悠君に挨拶しておいで」
「ひぃっ…………!!!」
グレート・デンで伝次郎は無いんじゃないか、とか、此処は店内だ、とか言いたい事は沢山あったけど、それも犬がのそりと動いた所為で掠れた悲鳴にしかならず。
そうこうするうちに僕の腹くらいまである大きな身体を持つ犬はヒタリ、ヒタリと僕に近付いて来て、ついに目の前まで来た時には、その獣特有の荒い息遣いまではっきりと聞こえて来た。
「て、てんちょ……、僕、無理……!」
震えながら後退っても、直ぐ後ろは卑猥な玩具が並ぶ棚があってそれ以上は下がれない。
どうしよう、どうしようとオタオタする僕を店長はニコニコ笑って見ているだけで助けてもくれず、あっという間に距離を詰めた犬の濡れた鼻先がワイシャツ一枚を隔てた腹に当たって、一瞬本当に気が遠退いた。
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