お客様は神様です!

料亭を営む両親のもと、自由気ままに僕は育った。


家業は五つ上の兄が継ぐことになっていたし、おかげで僕は大学を卒業し趣味の延長だった日本舞踊で講師をする傍ら、読書三昧の毎日。


そんな僕のもとに突然両親の訃報が入ったのが、三ヶ月前の事だった。


悲しむ間もなく葬儀の準備に追われ、兄に請われて、経理とはいえ料亭の仕事を手伝う事になって……。


僕は毎日、自分には向いてないんじゃないか、とか、兄さんの足手まといなんじゃないか、とか後ろ向きな考えしか出来なくて、それでも何とか日々を過ごしていたのだけれど。






「えっ!?離れにご挨拶!?」


いきなり兄さんに離れのお客様に挨拶に行け、と言われて、僕は驚いて固まってしまった。


だって、今までこんな事一度も無かったのだ。


「拓海、初めは俺もお断りしたんだけど、増田先生がどうしても、と言われているんだ。きっと俺が前にお前の事を話したからだろうけど…」


「そんな……、僕、挨拶だなんて……」


増田先生と言えば、常連で上客で、決して粗相があってはいけない相手だ。


そんなお客様に、一体何をどうしろと言うのだろう。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だ。増田先生は多趣味な方だから、お前の踊りの話をお聞きになりたいんだろうよ。………拓海、行ってくれるね?」


兄さんにそうまで言われては、頷かない訳にはいかない。


僕は不承不承首を縦に振り、着替えの為に一度部屋へと戻ることにした。







選んだのはやはり着物で、明るい銀鼠の単衣物。


紺色の足袋を履いて、長襦袢、長着の順で身に纏い、最後に帯を締める。


長年着慣れた着物は漸く僕の気分を落ち着けてくれて、先程よりは幾分ましな心持ちで離れへと向かった。


それでも、やはりというか何というか。


「失礼致します」


と、廊下に座して障子の向こうに声を掛けた僕の手は、みっともないくらいに震えていたのだった。


「入りなさい」という声に促され、僕は恐る恐る障子を開けた先には、壮年の男性客が二人。


上座に座っている白髪混じりの男が、恐らく兄の言う増田先生だろう。


その右前に座る男の人が誰かは分からなかったが、その人も増田先生と同じように、ニコニコと微笑んでいる。


僕が微かに震える声で「お食事の方はいかがでしたでしょうか」と言うと、先生は「うん、美味しかった」と優しく言ってくれた。


「確か拓海君と言ったね。ささ、そんな所にいないでこちらに来なさい」


「は、はい…」


そう言われて擦り寄れば、「さあ」とお猪口を渡され、お酒を注がれる。


僕は殆どアルコール類が駄目なのだけれど、とてもそんなことを言える雰囲気では無く、仕方なく一気に流し込んだ。


「良い飲みっぷりだねぇ。さ、もう一杯」


と、今度はもう一人のお客様にお酒を注がれてしまう。


増田先生の分を飲んでしまった手前、飲まない訳にはいかない。


僕は覚悟を決めて盃をあおった。


「ふぅ……」


「おや、拓海君。もう真っ赤だよ」


「かわいらしいお顔が上気して更にそそるね。松崎君もそう思うだろう?」


そう言われても、僕はアルコールでポーッとなってしまい、あまり反応出来なかった。


ふわふわとした頭のまま、ああ、この人は松崎さんというのか、等と思っていただけで。


だからだろうか。


頼りなく傾ぐ身体を引き寄せた僕の着物の裾辺りを増田先生が捲り上げたのも、松崎さんが僕のすぐ横に移動して来たのも、大して気にはならなかったのだ。


「さあ拓海君、もうちょっと飲んでごらん」


そう言いながら、先生は何故か僕の帯を緩めてしまう。


「や…、先生…、僕、もう…」


「増田先生、見て下さい。拓海君もう足まで赤く染まってしまいましたよ」


松崎さんは、乱れた裾を更に割って僕の足袋に包まれた足先からふくらはぎまでをすりすりと撫でていた。


「んふ…、擽ったぁ……」


しゅるしゅると、絹の鳴る音が聞こえる。


ふと気が付くと、いつの間にか僕は薄い藤色の長襦袢一枚の姿にされてしまっていた。


「あ、れ……?何で……」


これはおかしい、そう思っても、完全にアルコールの回った身体ではまともに身動きも取れないし、何より『常連』で『上客』のお客様のやる事に逆らえる筈も無い。


ただワタワタと焦る僕の顎を先生が掴んでクッと上向けたと思った途端、いきなり先生は僕の唇に喰らい付いて来た。


「んぅっ!?…ン、はむっ、ふんん!」


何の気構えもしていなかった僕の口の中へあっという間に先生の舌が入り込み、ぬちゃぬちゃと音を立てながら貪られる。


ちゅうちゅうと吸われた舌の付け根がじんわりと痺れて来た頃、今度は松崎さんが僕の襦袢の裾から手を突っ込んで、パンツの裾を掴み引き抜いてしまった。


「やっ……!はンッ、んぅんっ、ちゅ…」


制止の言葉は先生の唇に飲み込まれて、松崎さんは裾が乱れて露になった僕の太腿に手を滑らせる。


何とか股間は隠れているものの、これ以上動けば呆気なく薄い生地は腰まで捲れ上がってしまう。


そんな状態では、無闇に動けない。


結局僕は、先生にも松崎さんにも抵抗らしい抵抗等出来ないのだった。






「んはっ、ハァ…ン!あっ、駄目ェ……!」


漸く唇を解放された時には、はだけた襦袢の胸元に忍び込んだ先生の手が僕の小さな乳首をコリコリと転がし、剥き出しになった足を片方抱え上げた松崎さんに膝の内側をぴちゃぴちゃと舐められていた。


ここまで来れば、いくら酔っ払い状態で、尚且つ色事に疎い僕にでも今がどんな状況か分かる。


僕は今、二人のお客様に犯されようとしているのだ。


「駄目だなんて、そんな事を言う割に拓海君の乳首はつんつんに勃ち上がっているよ?」


「本当ですね。僕が舐めている間も腰が揺れて……。もしかして拓海君、勃起しているんじゃないかい?」


「イヤッ…!やめてぇ……!」


お二人の言葉に、堪らない羞恥が沸き上がる。


何故なら、僕は自分のペニスが反応している事に気が付いていたのだ。


だけど、僕が気付いているのにお二人が気付いていない訳も無くて。


「はあぁんっ!」


「ああ、やっぱり。ほら、びくびくしているよ」


「いやらしいね拓海君。たったこれだけでオチンチンを勃起させてしまうだなんて」


いきなり先生に握られた僕のペニスは、そうやって言葉で嬲られる度に素直に反応を返して、気が付けばうっすらと襦袢に染みさえ作ってしまっていた。


「どれ、いつまでも襦袢の上から触っていたら拓海君が可哀相だ。松崎君、ご開帳と行こう」


「そうですね、では…」


そう言って、松崎さんは僕の襦袢の裾を掴むとそろそろと開いて行く。


慌てた僕が「あっ、まっ、待って下さ…!」と言っても止めて貰えず、ついに、はしたなく勃起した僕のペニスがお二人の目に曝されてしまった。


「ああ…、見な、でぇっ……!」


余りの恥ずかしさに両手で顔を覆い視界を閉ざすけど、目を閉じていてもお二人の目が僕の股間を凝視しているのが良く分かる。


堪らない思いでじっと身を固めていると、不意に先生が僕の下の毛を掴み、「邪魔だな」と言った。


「可愛いオチンチンはそそるが、邪魔だ」


僕には良く意味が分からなかったけど、松崎さんは「そうですね、邪魔ですね」と言って、何やら脇に寄せてあった鞄をごそごそとあさっている気配がする。


「え……?」


あられもない恰好のまま両手を下ろした僕は、再び近付いて来た松崎さんの手にした物を見て、今度こそ理解に苦しんだ。


松崎さんは、どうやらシェービングフォームらしい缶を振って中身を掌に取り、僕の方に向き直る。


意図を掴みかねて先生を見上げたけど、そんな僕を無視して、先生はいきなり僕の両足を爪先が耳の脇に付くくらいまで持ち上げてしまった。


「やっ…!止めて下さいっ……!」


「ああ、良く見えるね。じっとしているんだよ拓海君」


「動くと拓海君の大事なところに傷が付いてしまうからね」


「ひぃっ……!」


そう言って僕の股間にシェービングフォームを塗りたくる松崎さんの右手には剃刀。


そこまで来て、僕は漸く先生の「邪魔」という言葉の意味が分かった。


切れてしまうのを恐れて動けないでいる僕の股間に、剃刀が当てられる。


止めてとも言えずにプルプルと震える僕の股間の毛を、松崎さんはさくさくと剃り上げてしまった。


「ほら、綺麗になったよ」


最後におしぼりで拭われたそこは、信じられない事に、さっきまで生えていた毛が見事に剃られて白い肌を曝している。


だが、何よりも信じたく無かったのは、こんな事をされたというのに、未だにペニスを勃起させている僕自身だった。


「ひっ、やだっ、何でぇ……?」


ぴくぴくと動くペニスは先端の割れ目から汁を零し、触れられるのを今か今かと待っている。


そんな僕を上から見下ろして、先生が優しく、諭すように、言った。


「拓海君、気持ち良い事は悪い事では無いんだよ。君が今勃起しているのは、君の身体がこの状況を喜んでいるからだ。それを素直に受け止めなさい」


「気持ち、良い……?」


「そうだよ拓海君。今から僕と先生と拓海君の三人で、気持ち良い事をしようね」


と、そう言って、いきなり松崎さんは僕のペニスを口に含んだ。


「あはぁあんっ!!やっ、ひぁあんっ!!」


松崎さんは、唇全体で扱いたかと思えば舌先でチロチロと裏筋をなぞり、ちゅうちゅうと亀頭を吸う。


未だかつて味わったことの無いような濃厚なフェラチオに悶える僕の目の前に、先生の、赤黒く血管の浮き出たペニスが差し出された。


「ほら拓海君、お仕事の時間だよ」


「あふんっ、ア…、お、しご、と……?んふっ…」


「そうだよ。君のお仕事は、私のコレに奉仕することなんだから」


「アッ、アッ…、僕、おしご、とぉっ、アンッ、しなきゃ……、ひぃんっ……」


朦朧とする意識の中、仕事という言葉だけが僕の頭を占める。


おかしな使命感に燃えた僕は、躊躇いもせずに先生のペニスをぱっくりと咥え込んだ。






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