新しい制服
僕の働くレンタルビデオショップは繁華街の外れにあり、土地柄のせいか、ゲイのお客さんがとても多い。
うちの店長もそうらしくて、面接の時に大丈夫かと聞かれたけど、僕は別に気にならなかった。
だけど、始めて直ぐに案内された店内に、僕はとても驚いた。
店の奥の一画、普通はアダルトコーナーがある場所がカーテンで仕切られていて、その奥がゲイ専門コーナーになっていたのだ。
そこはDVDやビデオだけで無く、卑猥な玩具や、派手な瓶に入ったいかがわしい液体なんかが所狭しと並んでいる。
勤め始めて分かったが、普通のコーナーよりもそちらの方を利用する人の方が多かった。
だから、自然と僕もそちらに出入りすることが多くなり、入って一週間も経てば、男同士が絡み合うDVDのパッケージやグロテスクなディルドにも慣れてしまっていたのだった。
「悠君、見てよこれ。新しい商品なんだけど、きっと売れるよ!」
「…えっと、それ、何ですか…?」
返却された商品の確認をしていた僕に店長が見せてきたのは、どう見てもただの電気マッサージ機。
それを嬉しそうにいじくり回していた店長は、僕の「マッサージ機ですよね」という言葉に大きく頷いた。
「うん、ただのマッサージ機。だけどね、これはノーマルタイプだけど、先っぽのアタッチメントが付け替え出来て、結構人気なんだよ」
「……へえ…」
人間って凄い。
健康器具までアダルトグッズとして使ってしまうなんて。
僕はその時本当に感心していたんだけど、店長にはどうやら気のない返事に思えたらしい。
少々ムッとした表情で立ち上がると、グイッと僕の腕を引っ張って無理矢理パイプ椅子に座った自分の膝の上に僕を座らせた。
「ちょっ、店長……!何するんですか……!」
「だって悠君信じて無いみたいだから。ここは是非体験して貰わなくちゃ」
そう言って、店長は僕を後ろから抱え込むと電源を入れたマッサージ機を僕の股間に当てた。
「ひゃああっ…!!やっ、てんちょ……、やはぁんっ!!!」
ヴヴヴヴと細かく、だけど強い振動で、僕の股間をマッサージ機が揉んでいく。
突然の店長の暴挙に慌てる僕をよそに、僕の身体は素直にその刺激を快感として受け止めるのだ。
見る間に盛り上がった股間をマッサージ機でゴリゴリと摩りながら、店長は嬉しそうに「ね、気持ち良いでしょ」と言った。
「ノーマルだとこうやって服の上から刺激するのが一番かな。当たる部分が大きいから、玉まで震えて凄いでしょ?」
そんな店長の言葉にがくがくと頷いて、僕は必死に店長に「分かったから、もう止めて」と訴える。
だって今は仕事中で、此処は店のカウンターの中なのだ。
背の低いカウンターの中は店の入り口からまる見えで、意外と来店数の多いこの店はいつお客さんが来るとも限らない。
しかも、今僕はかなり追い詰められていた。
毎日学校とバイトで忙しく、彼女も居ないし自慰をする暇も無いのだ。
そんな僕のペニスはマッサージ機の振動で既にかちかちで、今にも爆ぜる寸前だった。
「てんちょ、も、止めて下さっ……、アアッ…!!」
「何言ってるの、悠君のオチンポはもっとって言ってるよ?ほら、ズボンにまで染みが出来てきた」
えっ、と思って嬲られ続ける股間を見れば、下着を通り越して薄いコットンパンツにまで溢れた汁が染みている。
それを見た途端何故か僕の身体は一気に熱くなって、じくじくとお尻の穴まで疼き出した。
その時。
ガーッと音を立てて、入り口の自動ドアが開く。
入って来たのは常連のお客さんの一人で、何時も過激な内容のゲイDVDを借りていくがっしりとした男の人だった。
「あっ、あっ、いらっしゃ、ませぇっ…、はぁあんっ!!」
何とか取り繕おうと普通にしたつもりが、快感に震える声で無駄になる。
僕のそんな姿を見てしまったお客さんは最初は入り口付近で固まっていたけど、そのうちニヤニヤしながら近付いて来た。
「店長、それ新しい電マ?」
「いらっしゃい。そうだよ、試してみる?」
そう言うと、店長は器用にもマッサージ機を僕の股間に当てながら、お客さんにハンドルを差し出す。
ちょっと、とか、待って、とか言いながら慌てる僕には構わず、お客さんはそれを当然のように受け取ってしまった。
「ふぅん……。三段階に調節出来るんだな。今はまだ弱か……。
中だと、どれくらい?」
そう、僕の目を見詰めながら、お客さんがハンドルに付いたつまみを回す。
すると。
「あ――――!!!!やっ…、やらぁあっ!!出るっ、出るぅっ……!あ、あひゃっ…、イックウゥウウッ――!!!!」
ビュルビュルッ、ビュビュッ!
既に店長に散々いたずらされていた僕は、強くなった振動に、あっさりと射精してしまったのだ。
「あひっ、ヒィッ………」
「おいおい、もうイッちまいやがったよコイツ」
「かーわいいね悠君。まだ身体びくびくしてるよ」
そんな風に言われても、今の僕には何の反応も出来ない。
久しぶりの射精は酷く気持ち良く、僕は全身から力が抜けて店長にぐったりと凭れ掛かってしまっていた。
だが、無理矢理射精させられた僕を、更なる責めが待っていたのだ。
「でも悠君まだ一回しか出して無いよね。もう一回イケるでしょ」
「………え……?」
「んじゃ、強にしてみっか。
しっかり味わえよ」
「や…、待って、おねっ、お願っ……!やめてっ、やめっ……、イァアァアアッ―――!!!」
射精とともに離されていたマッサージ機が、更に強い振動で僕の股間に当てられる。
イッたばかりで敏感になっていた身体はそんな刺激に堪えられず、僕はあっという間に二度目の絶頂に向かって追い上げられていった。
「あ――――!!!やらっ!やめひぇえっ!!!」
何とかその苦しいまでの快感から逃げようと身を捩るけど、後ろから店長にがっしりと押さえ付けられてはそうもいかない。
お客さんはそんな僕の痴態を笑って見詰め、更に強くマッサージ機を股間に押し付けた。
「ひゃうぅうっ!!た、たしゅけっ…!!!またぁっ…、また来るうぅっ!!!んん――――!!!!」
再び下着の中に大量の精液を吐き出す。
だが、お客さんはまだ止めてくれない。
二度の射精ですっかりぐちょぐちょになった僕の股間を、下から玉を掬い上げるようにしてマッサージ機で嬲るのだ。
「いひぃっ…!も、や!もぇちゃう…!おひっこもぇちゃうよお!!!んはあぁああっ!!!!」
ついに僕は、精液だけでは無く、おしっこまで漏らしてしまったのだった。
「すげぇな、おい…。俺勃起しちまったぜ」
「はは、僕も。でもとりあえず…、悠君、動ける?立てるならシャワー浴びておいでよ。着替え用意しておくからさ」
「ン……、はぃ……」
店長の言葉に朦朧としながらも頷いて、何とか立つことに成功した僕は、余りの恥ずかしさに俯きながら奥のシャワールームへと向かう。
背後に突き刺さるようなお客さんの視線を感じたけれど、僕には振り返る勇気は無かった。
どうにかこうにか脱衣所にたどり着いて全裸になった僕は、汚れてしまった服を滅多に使われない洗濯機に入れて、狭いユニットバスに入った。
コックを捻れば、冷たい水が勢い良く床を打つ。
未だにほてる身体を持て余していた僕は、躊躇うことなく冷水を浴びた。
(どうしよう、僕…、あんな恥ずかしいこと………)
決して僕が悪い訳では無いけれど、どうしても羞恥が拭えない。
ズブズブと自己嫌悪に嵌まっていきそうな思考にストップをかけるため、僕は頭から冷たいシャワーを浴びた。
が。
「うわっ、やっぱり悠君似合ってるよ!すっごい可愛い!」
「…や、も、てんちょ……」
シャワーから出た僕を待っていたのは、店長からの明らかなセクハラだった。
着替えと称して着せられたのは、僕には大きすぎる白いワイシャツ一枚と、女性用の下着。
ピンクのサテン生地で出来たパンツは両側を紐で結ぶタイプのもので、布面積の少なさに泣きたくなる。
まあ、そこに僕のペニスがきちんと収まってしまうのも悲しいけれど。
頼むから他の服を貸して欲しいと言っても、店長はこれしか無いからの一点張りで、結局僕は洗った服が乾くまでその恰好で仕事をするはめになったのだ。
しかも。
「ちょっと僕用事あるから出掛けるね。悠君あとよろしく!」
「ちょっ、店長!?そんな、無理でっ……、店長ーっ!?」
奥で在庫の整理でもしようと目論んでいた僕は、店長のそんな一言で、結局店に出ることになったのだった。