第4回
5 壁
八尋弁護士のアドバイスから、和子たちは改めて裁判のために同級生の家を訪ね歩いた。
そこで気付かされたのは、実名で教師や学校のことを語らせる難しさだった。
「そのことを聞くと子どもは泣き出して、情緒不安定になる」
「子どもには会わせたくない」
親たちにすれば、自分の子どもが証言することで、学校から目を付けられ、不利な立場に追い込まれるのを避けたいという思いがある。それがわからないわけではない。
事件当日、匠と新聞紙で棒を作り遊んでいた児童からは、すでに生々しい当日の様子を聞いていた。この児童がいなければ、いまでも自分には何が起こったかわからなかったはずだ。だが、改めて母親に「息子さんから聞いた話を陳述書にしてほしい」と頼みに行くと、母親はこう言った。
「うちの子どもは嘘つきで、嘘ばかり言うんです。それに小学生の子どもがしゃべる話に信用性はありません。だから陳述書は書けません」
この母親は別の小学校で教員をしていた。駄目かもしれないと覚悟はしていたが、和子は違和感を覚えながら、改めて問わざるを得なかった。
「お宅のお子さんが私たちに話してくれた、匠が亡くなった当日の学校でのことは嘘だと思われるんでしょうか?」
母親は黙ったままだった。和子としては、この児童には陳述書だけでなく、証言台に立って証言してほしいとも願っていた。落胆は大きかった。