「田中先生を呼んでください。学校で何があったか、田中先生から説明してほしいんです」
校長は数時間前に病院で言った言葉をまた繰り返した。
「田中先生は憔悴しきっていて来られません」
そして、言いにくそうに切り出した。
「明日は卒業式なんですが、式典をさせてもらってよろしいですか」
和子は匠の大好きなバレー部の先輩も卒業式を楽しみにしていることを知っていたし、今朝、学校に送り届けたときに「先輩たちのために卒業式の飾りつけせんないけんけ」と言った匠の言葉も耳に残っていた。
「祝ってあげてください」
複雑な思いを抱えながら、それだけ口にしたことを和子は覚えている。
青葉小学校では、卒業式を終えた後、匠の同級生である5年生だけを集め、児童集会が行われている。そこで、校長は匠が昨日亡くなったことを初めて告げた。だが病気で亡くなったのか、事故なのか、どこでどうやって亡くなったのか、具体的な説明はなかった。ところが、児童の中から、
「田中先生が匠君を殺したんだ!」
という叫び声が上がったのである。
校長の話を聞いた後、児童たちは教室に戻り、そこで「こころの健康調査票」という記名式のアンケートが配られた。全20項目の質問の最後に「今の気持ち」を書くようにスペースが設けられていた。アンケートはすぐに回収されて、待機していたスクールカウンセラーに渡されている。カウンセラーはその場で回答をチェックすると、田中教諭を非難するようなことを書いた児童たちを一人一人呼び出して、「そんなことを言ってはいけない」と指導したという。
一方、児童の親たちには学校から緊急連絡網が回され、午後5時から体育館で保護者会が行われた。校長は匠が亡くなったことを告げると、なぜ亡くなったのかも説明せず、突然スクールカウンセラーを紹介し、子どもの心のケアについて話を始めた。納得できず詳しい説明を求める親たちには、こう言った。