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教育現場レポート
暗黒教室

須賀康

第2回

「マスコミが駆けつけますよ」

和子は由美子に向かって叫んだ。息子は必ず助かる。息子が目を覚ます前に、母親の私が、息子が苦しんでいた原因をわかっておいてあげなければならない。
「また先生となんかあったんや! 先生に電話して!」
和子に言われるまま、由美子は学校に電話をかけ、匠の担任の女性教員である田中兼子教諭(仮名)を呼び出した。傍らでは救急隊員による心臓マッサージが続けられている。

「ああ、お母さん、匠君どうされていますか」
由美子は自分のことを匠の母親と間違えていると思ったが、田中教諭の口調から学校で何かがあったのは間違いないと確信し、そのまま話を続けた。
「『どうされていますか』って、何か学校であったんですか」
「今日女の子の頭を殴ったのできつく叱りました。きつく叱ったけど謝らないので胸ぐらを持って揺すったんですよ。そうしたら、匠君が倒れました。その後、匠君が私にペットボトルを投げつけて、教室から出て行ってしまいました。少ししたら戻って来ましたが、ランドセルを持って、またすぐに出て行ったんです」

由美子は、匠が自殺を図ったのはこの学校での一件が原因だろうと思い、田中教諭に向かって口調を強めた。
「先生、匠は先生に怒られて家に戻ってきて、そして自殺を図ったんですよ。先生は私の言ってる意味がわかりますか。先生に怒られて帰ってきて、すぐ自殺を図ったんですよ」
受話器の向こうで田中教諭の息を呑む様子が伝わってきた。その後、言葉を失ったままの田中教諭に校長と電話を替わってもらい、搬送先の病院名などを告げて電話を切った。

自宅から15分ほどの九州厚生年金病院に運ばれた匠は、ICUに入った時点ですでに瞳孔が開いた状態だった。

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コメント / トラックバック1件
  1. yasu より:

    近所の書店で「暗黒教室」を読みました。
    私が関わっている事件も、須賀さんに取材していただいただけに
    教師はなぜ、こういう事件をベテランになってまで犯すのか、
    その点も含めて取材していただければと思えてなりません。

    私も、いわゆる期限付き教師というのをしておりましたが、
    教師の内面の論理というのは、一般の人にはなかなか分かりにくいものです。
    私も体罰を振るった教師の論理というのを、うまく言葉では表現できませんが何となくは理解できます。しかし、あくまでも、それは身内の論理にすぎません。

    ただ私は、作家ではありません。具体的に表現しろと言われても、なかなか
    うまくまとまらないんですね。というか、まとめられないというのが事実
    なのでしょうが。

    そういう意味でも、須賀さんのご活躍を心よりお祈りしております。

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    須賀康須賀康
    (すが・やすし)
    1950年生まれ。政治・経済、医療分野などで幅広く「人と組織」の問題をテーマに取材活動を続ける。この10年間は特に少年犯罪、学校でのいじめによる自殺について、週刊誌・月刊誌などで多くの原稿を発表している。

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