北九州・小5体罰自殺事件
「なぜ我が子は自宅で首を吊ったのか」
ベテラン女性教師の常軌を逸した体罰を法廷で明らかにしたのは、
子どもたちの勇気ある証言だった─。
プロローグ 緊急入院
福岡空港行きの航空券を確認していたときだった。日曜日の午後9時過ぎ、いつもなら携帯電話の呼び出しなどほとんどない時間帯だ。着信音に気がつき携帯を開くと、ディスプレイには翌日会うことになっている永井和子(48歳)の義妹・田丸由美子(45歳)の番号が表示されていた。明日の予定に不都合ができたのかと少し不安を抱きながら通話ボタンを押すと、すぐにあわてた由美子の声が飛び込んできた。
「すみません。明日のことなのですが、義姉が急に入院することになって……。お会いすることはできるのですが、うまく話せるかどうか」
あの事件から1年後、和子に子宮頸がんが見つかり、入退院を繰り返していることは知っていた。しかし、1週間ほど前に自宅にいる和子と電話で話し、およそ1年ぶりに会う約束をしたときは、緊急入院するほど体調が悪いとは思えなかった。取材は遠慮したほうがいいのだろうか。由美子は逡巡するこちらの様子を察したように言った。