私の好きなことば (10)
この部屋では、私が出会ったことばや好きなことば、思い出のことばを紹介しています
【皆既日食】かいきにっしょく (99.09.14、03.01.26改)
広辞苑によれば、日食は以下のように記述されています。
にっ‐しょく【日食・日蝕】
月が太陽と地球との間に来て太陽光線をさえぎる現象。太陽面が月面により全部覆われる時を皆既食、太陽面が月の周りに環状にはみ出す時を金環食、月面が太陽面の一部を覆う時を部分食という。にっそく。日食の事を始めて聞いたのは、小学生の頃(う〜ん、30数年前・・・(^^;)熊本天文研究会という同好会に入っていたのですが、当時その会の会長であった小貫熊大教授のお話でした。その内容は1943年2月5日に北海道で観測された皆既日食の観測の時のお話で、何しろ時代が時代だっただけにいろいろな面でずいぶん苦労をされたとのことでした。
このときの観測は大きな意味のあるものだったのです。アインシュタインが1915年に発表した一般相対性理論という仮説によれば、光が大きな質量のそばを通るときその進路が曲げられるとのことでした。しかし、それを証明する事は難しいことでした。そこで皆既日食の時に太陽の近くに見える星の位置が太陽の質量の影響で、ずれて見えるのではないかと考えられました。
結果としては、このときの皆既日食の観測結果やそのほかの実験などにより一般相対性理論の正しいことが証明されたのです。この皆既日食の観測やその結果のお話は、その後私が大学に入ってからも聞いていますので、余計印象の深いものでした。このように、昔から憧れの的であった皆既日食とやっと出会うことが出来たのが1991年7月11日のハワイ島でした。私の星の恩人である宮本さんが企画された日食ツアーに家族3人で同行できたのです。息子は当時小学生でしたが、夏休み前の学校をサボっての参加でした。
このときは残念ながら薄雲を通しての皆既日食でしたが、それでも素晴らしいものでした。太陽の端の方からだんだん進んでくる月の影。時々流れる雲を気にしながらもその時を待っていました。
月の影が太陽を覆い尽くす瞬間、ダイヤモンドリングという大きなダイヤモンドを付けた指輪のような姿が一瞬だけ見られます。それを過ぎると皆既日食の始まりです。このときの皆既日食は約4分でしたが、周りは夜のように暗くなり、コロナを付けた黒い太陽が空に光っている不思議な世界です。風がサワサワと吹き出し、動物の鳴き声なども聞こえてきます。皆既食の終わりにもダイヤモンドリングが見られます。その後はさっきまでと時計を逆回しにしたようなものですが、観測していたみんなすごい脱力感でした。
薄雲を通してと書きましたが、この日にハワイの別のポイントで日食を待っていた人の多くは雲が邪魔して見えなかったらしい。薄雲を通してもあんなに素晴らしいのだから、雲がなければ・・・と思いましたが、見られただけでも幸運だったのですね。![]()
右の写真は九州の天文ファンなら誰でも知っているという、宮本幸男さんが1983年6月11日にジャワ島で撮影されたものです。数枚の写真をデジタル的に合成して作られたものです。肉眼で見るコロナはとても美しいものですが、なかなか写真で表現するのは難しいものです。しかし、デジタル技術によってかなり肉眼で見たものに近いものに仕上がっています。
ちょっとピンボケなのは、私の責任です(^^;この次日本で皆既日食が見られるのは、2009年7月22日の奄美地方、2035年9月2日には水戸市をはじめ本州のど真ん中を日食の影が走ります。皆既日食は一度見たら病気になると言った人がいましたが、次の日食の時もたくさんの人が感動を求めて行くことでしょうね。