生活保護の受給者が全国市町村で最多の大阪市は9日、生活保護行政特別調査プロジェクトチーム委員会議を開き、国への提言や市の取り組みをまとめた。「働ける人には働いてもらう」との観点から、職業訓練中の失業者が対象の国の「訓練・生活支援給付」の拡充を要請。稼働層に訓練を義務付け、拒否すれば生活保護申請を却下する内容で国に制度の抜本改革を求める。
不況で市の生活保護受給者は激増し、昨年12月現在で13万6617人。10年度当初予算案で保護費は約2863億円に達し財政を圧迫している。一方で保護費をピンハネする貧困ビジネスや不正も表面化している。
提言では、働ける場合、生活保護に先んじ「訓練・生活支援給付」を拡充して対応。同給付は雇用保険を受給できないなどを条件に単身者で月10万円が支給されており、拡充で受け皿を広げる。給付期間を3年程度に限定し、経過後に就労意欲がみられない場合、清掃など社会奉仕活動を課し、自立を促す。
提言に先駆け、市は緊急雇用創出基金事業などで被保護者が優先的に就労できる枠を160人分設定する。
貧困ビジネス事業者対策も強化。不正受給・請求の実態調査で悪質だった16件の告訴・告発を検討している。
また、大阪市の昨年12月の生活保護申請者2816人のうち274人が6カ月以内に市外から移っていた。市は「他の自治体が財政負担を避けるため大阪に向かわせている可能性がある」として、27件について転出元の自治体と協議していると明らかにした。【石川隆宣、堀文彦】
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◆大阪市の当面の取り組み◆
▽敷金・礼金を取らない物件に入居の場合、住宅扶助での敷金は不支給
▽全国最高の敷金給付の上限を家賃7カ月分から4カ月分へと変更
▽他自治体が大阪市での生活保護申請を勧めた場合、事案を公表
▽保護費を遊興に使う受給者に生活指導し、社会奉仕活動や保護の停廃止も検討
◆国への提言・要望◆
▽高齢者の生活保障を創設。年金受給者と保護受給者の不均衡を解消
▽稼働能力や過剰医療についての審査機関設置。医療費の一部自己負担を導入
▽無料低額宿泊所について届出・許可制など法規制の対象とする
毎日新聞 2010年2月9日 大阪夕刊