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きょうの社説 2010年2月10日
◎日本海沿岸漂着ごみ 韓国政府へ強く申し入れを
韓国のノリ養殖業者が廃棄したとみられるポリタンクなどが今冬も大量に日本海沿岸に
流れ着き、環境省の集計で石川県内の海岸からも既に1921個が見つかった。廃ポリタンクは調査開始から3年続けて全国で1万個以上が発見されており、石川県では今年、秋田県に次いで2番目に多い。タンク内には、ノリ養殖業者が網の消毒に使う強酸性液体が残っている場合があり、うっかり触れるとけがをしかねない。石川県は能登から加賀にかけて海岸線が長く、ごみが漂着しやすい地形である。北國新 聞社の舳倉島・七ツ島自然環境調査団が行った現地調査でも、舳倉島や七ツ島に大量の漂着ごみが見つかった。環境省によると、廃ポリタンクの4割ほどにハングル表記があり、容器の多くが韓国から流れ着いているのは明らかだ。政府は韓国側に取り締まりを強化するよう強く要請してほしい。 昨年度、日本海沿岸に漂着した廃ポリタンクは約1万7千個に上る。空のものは自治体 で焼却処分し、中身が残っているものは、廃棄物処理業者に処理を委託するケースが多い。韓国でノリの養殖業者が使う酢酸や硝酸入りのほか、廃油が入った容器もある。昨年7月に「海岸漂着物処理推進法」が成立し、海の漂着ごみの処理を国が財政支援する仕組みができたとはいえ、回収・処分にかかる自治体の負担は重い。 昨年2月、海洋ごみ問題で日韓の実務者協議が初めて開かれ、政府は韓国側に対策を要 請したが、事務レベルでの交渉には限界がある。今月11日にソウルで開催される日韓外相会談で、岡田克也外相が、韓国外相に直接要請できないか。 韓国は竹島近くの海域で、ふん尿や下水汚泥などの海洋投棄を続けている。日本海の排 他的経済水域(EEZ)などでは、韓国密漁船が逃走の際に大量の漁具を不法投棄しており、水産庁によると、回収された刺し網は、東京〜福岡の2・5往復分、バイ貝やカニを捕獲するバイかごは、積み上げると富士山の20個分の高さになるという。こうした現状を韓国政府要人にじかに伝え、対策を講じるよう求めてほしい。
◎介護職の賃金改善 一過性でない制度が必要
厚生労働省は、昨年4月の介護報酬改定が介護職員の賃上げにどれだけ影響したかを調
査した。同省は3%の報酬引き上げで月2万円の賃金アップをめざしていたが、実際の平均月収は約9千円増にとどまった。ただ、今回の調査には、昨年10月に始まった「介護職員処遇改善交付金」制度の影響 は含まれていない。石川、富山県の対象施設の85%ほどは同交付金を申請しており、これら施設の給与はもっと増えているとみられる。しかし、この交付金制度は2011年度までの時限措置であり、現状のままでは、介護報酬の改定が職員の給与に十分反映されない上、交付金制度の終了で賃金が再びダウンする不安もつきまとっている。 他産業に比べて賃金が低く、慢性的な人手不足にある介護職員の給与を、一過性の補て ん措置に頼ることなく改善する制度づくりに今から取りかかる必要がある。 厚労省調査では、報酬改定後の昨年10月時点の介護職員の平均月収は23万1366 円で、前年同期より9058円増加した。業態別では、特養ホームと老人保健施設が1万2千円前後アップしたのに対し、訪問介護事業所は5千円台の引き上げにとどまった。 平均賃上げ額が厚労省の見込み額の半分にも届かなかったのは、報酬アップ分が職員の 給与ではなく、施設の維持経費などに回ったためとみられる。報酬の使途は事業者の判断にゆだねられており、給与引き上げのアンケートでは、事業者の44%は「定期昇給」で対応し、「改定を踏まえて引き上げた」のは23%、さらに13%は「給与を上げておらず、今後も予定なし」と回答したという。これらの数字は介護施設経営の厳しい実態を映し出している。 介護職員処遇改善交付金は、報酬改定が必ずしも給与増に直結しないことを見越し、今 年度補正予算で設けられた。月1万5千円の賃上げを図る狙いであるが、この臨時措置を恒久的な制度とするのか、12年度に見直される報酬の再引き上げで対応するのか、介護職員の給与改善を図る制度設計をしっかり行ってもらいたい。
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