贈与税がらみの疑問は、これにとどまらない。
小沢氏の説明では、'97年12月に3億円、'02年4月に6000万円を、それぞれ家族名義の口座から引き出したというが、
「ということは、今度は家族から小沢氏に3億6000万円が贈与されたことになりますね。このときの贈与税を小沢氏は払ったのか。いずれももう時効ですが、贈与税を支払っていなかった可能性もあります」(同前)
ちなみに国会議員の資産公開で、家族名義のものは対象になっていない。したがって、代議士は自分の資産を家族名義にしておけば、世間に公開する義務はないのだ。
小沢氏が溜め込んだ巨額の資金を世間の目に晒さないように家族名義にしたのだとしたら、悪質な“資産隠し”と言われても仕方ないだろう。
本当のことを言っていない
ところで実は、「心臓病で万が一のとき云々」との釈明は、別の観点からみても疑問が残る。
というのは、小沢家の場合、和子夫人のほうが小沢氏よりもずっと所得が多いことが高額納税者名簿によって明らかなのだ。つまり、小沢氏の身に「万が一」のことが仮にあったとしても、ことさら家族の金銭的な問題を心配する必要は必ずしもない。
具体的な数字を挙げよう。小沢氏が高額納税者名簿に登場するのは'91年。'93年には発表した著書『日本改造計画』がベストセラーになり、1億円を超える所得を得たと見られるが(以下、所得は納税額より推定)、それ以降は3500万円前後の所得で安定しているように見える(右表参照)。
一方の和子夫人が高額納税者名簿に登場するのは、小沢氏に先立つこと2年。所得額を比べても、平均して7000万円前後と、小沢氏の2倍ほどだ。
和子夫人は、新潟市に本拠をおく中堅ゼネコン福田組(東証1部上場)の元会長、福田正氏(故人)の長女だ。正氏は田中角栄元首相の後援会「越山会」の大物で、その田中元首相の仲介で小沢氏と和子夫人は結婚したという。
和子夫人は今も福田組の株式を136万3000株保有する大株主で、今年は400万円程度の配当金を受け取る見込みだ。
また、過去には複数の福田組グループ会社の監査役を務めている。本誌の調べでは、和子夫人は土木工事業の「興和」、道路・舗装工事業の「レックス、建設用仮設材リース業の「北日本建材リース」、建設用機械リース業の「重機リース」の4社の監査役に就いていた('08年当時。このうち現在は「重機リース」の監査役のみ務める)。
高額所得はその報酬によるものと見られるが、いくらオーナー一族とはいえ、政治家の妻に数千万円もの高給に見合った仕事を期待できるのだろうか。福田組は国や地方の公共工事も請け負うゼネコンだ。これはファミリー企業からの形を変えた「企業献金」と見られても仕方がないのではないか。
夫婦間で複雑な資金移動を行い、辻褄の合わない言い訳を繰り返す小沢氏。そろそろ国民に本当のことを説明するべきだ。
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