立正大学法学部教授で、税理士資格も持つ浦野広明氏はこう指摘する。
「土地を数億円で売却して、高額納税者名簿に名が挙がらないのはおかしい。ただし、その年に申告せず、越年申告する人もいます」
念のため、'86年以降の高額納税者名簿を調べたところ、小沢氏の名前は'92年版まで出てこない。
そもそも、湯島の土地の売却益だけで深沢の土地を購入することは可能なのか。都内の地価に詳しい不動産鑑定士が、'85年当時の地価から試算すると、小沢氏が相続した湯島の土地は「どう高く見積もっても、4億円といったところ」だという。
一方、同じく'85年当時の世田谷区深沢6丁目の地価相場から計算した1619m2の地価は「どう安く見積もっても10億円はくだらない」(同前)という。
つまり、湯島の土地を売った4億円だけでは、深沢に新しく土地を買えるはずもないというわけだ。小沢氏の説明は破綻している。
贈与税も払っていない?
この話を裏付ける別の証拠もある。'85年の一時期、小沢氏は相続した湯島の土地を担保に入れ、金融機関から融資を受けている。その極度額が3億3000万円。だが、その後、小沢氏はこの融資の担保として別の土地を差し出している。金融機関が湯島の土地は3億3000万円以下の担保価値しかないと判断したとも考えられるのだ。
いったいこの売却額でどうやって、推定10億円もの深沢の土地を買い、なおかつ2億円の現金を手元に残せたのか、小沢氏の説明には疑念が募るばかりなのである。
疑問はまだある。家族名義にしていた3億6000万円にしても、小沢氏側の弁護士は、
「小沢氏が父から相続した金を信託銀行に積み立てたもの」
と説明するが、冒頭に紹介したように小沢氏自身が「遺産はなかった」と言っている。また、そのようなカネを受け取っていたらやはり高額所得者に名を連ねるのが普通ではないか。
前出の浦野教授が話す。
「そもそも小沢氏と家族の同意のもとで預金を家族名義に差し替えたら、それは贈与と認められ、贈与税が発生します」
再び北田税理士が問題点を指摘する。
「贈与でなければ、あるいは借名口座をつくった可能性もある。今は本人確認なしに預金口座はつくれないのですが、昔はいくらでもつくれましたからね。
この場合、家族の名義で銀行に預金しているといっても、実態は小沢氏個人の資金を預けていたに過ぎず、贈与税は発生しません」
小沢氏は家族名義にしたことについて、1月25日の会見で、
「'91年に心臓病で入院したため、万が一のときに、という意識があった」
と説明した。
だが、その家族名義の口座から引き出した現金は、小沢氏の個人事務所の金庫に保管されていたという。もともと家族のために分けられた資金を事務所に置いておくというのも理解しがたい。そのうえ、
「万が一の場合にそなえて家族名義にしたといっても、それが単に名義だけの借名口座だというのは不自然です。これはやはり、小沢氏から家族に贈与が行われたとみるべきでしょう。
仮に50%という今の贈与税の最高税率で税金を払ったとしたら、半分しかおカネは残らないはずです」(北田税理士)
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