2009年6月18日
京都の大学でここ数年、不祥事が相次いでいる。各大学は、再発防止のため人権教育の強化やカウンセリング、講演会など様々な対策を講じているが、学生に対してどれほど効果があるのかは未知数であり、手探りの試みが続く。
京都教育大(伏見区)は学生6人が集団準強姦(ごうかん)容疑で逮捕されたことを受け、人権教育を強化する方針を掲げた。寺田光世学長は、1日の記者会見で「飲酒やハラスメントという基本的に守るべき道徳性やモラルの教育が全体として足らなかったことは反省している」と謝罪した。
その後、「当面の案のたたき台」(企画広報課)として(1)教員としての資質に必要な倫理観、道徳観、人権尊重などについて全学生向けの特別講義を開催する(2)指導教員が全学生と個別に面談し、事件に関連する注意や精神的なケアをする「ローラー作戦」を展開する――の2点をあげた。ただ、具体的な内容や日時は未定だという。
昨年12月、大麻取締法違反容疑で逮捕者が出た同志社大(上京区)は、有罪判決が確定した女子学生を退学処分にし、不起訴処分(起訴猶予)になった男子学生4人を今年9月30日までの停学処分にした。停学中は日常生活について定期的に報告を受け、毎月、学内で臨床心理士がカウンセリングを実施。各学部の教員が、薬物乱用防止についての指導もしている。
また、府の担当者による講演会を開いたり、薬物乱用防止を呼びかけるポスターを募集したりして啓発を進めている。関西、関西学院、立命館との4大学共同で実施した薬物乱用に関するアンケートを、今後の対策に生かす。
同じく大麻取締法違反容疑で逮捕された男子学生1人を3月から無期停学処分にしている京都大(左京区)も、1カ月に1度、学生を大学に来させ、教員2人が指導しているという。各教員が学生全員に直接、薬物乱用防止を訴える「ローラー作戦」もした。
京都産業大(北区)は、イタリア・フィレンツェ歴史地区の大聖堂に落書きした学生3人を昨年6月、2週間の停学処分に。3人には臨床心理士が個別にカウンセリングをし、規範意識について教えたという。一般の学生にはモラルやマナーに関するハンドブックを配布。10月には専門家による文化財愛護についての講演会を開いた。
ただ、担当者からは「何が効果的な方法なのか」などと悩む声も上がる。ある大学の担当者は、「大学は学級単位で動いておらず、学生にも保護者にも周知徹底するのは難しい。学生自身も大人であり、学外の行動まで関与するのには限界がある」と明かす。(小林正典)
ここから広告です
広告終わり