射撃の教育を受ける新隊員=陸上自衛隊第1師団ホームページから
自衛隊は有事に備える実力組織であり、災害派遣などの際には厳しい環境の下での任務が求められる。若く体力に優れた隊員が一定割合必要だ。任期制自衛官は、部隊の第一線の人材を確保する制度として重要な役割を果たしてきた。
自衛隊では、大型特殊運転免許や自動車整備士、ボイラー技士、電気工事士など、部隊での業務に必要な各種資格を取得できる。応募者にとっては、入隊中に取得した資格を任期後に民間企業への転職に生かせるのが利点だった。
「生涯の就職口ではなく、期間限定なので若い隊員を確保しやすかった。隊員も様々な特技を身につけられ、満了後に民間に転職するときにも付加価値がつく。双方に利点がある制度だ」と、陸上自衛隊のある幹部は説明する。
バブル期には、全自衛官の約30%にあたる7万5千人が任期制(89年度)。2期目に任期を継続した自衛官は4割(90年度)程度だった。
ところが、バブル崩壊後には任期後も隊に残る道を選ぶ人が急増。93〜02年度の間に70〜80%に及んだ。こうして「辞めない任期制自衛官」が徐々に増えていったと防衛省は分析している。
バブルのころには盛んだった、若い隊員が2〜3年周期で大量に入れ替わる「新陳代謝」が鈍れば、自衛官の高齢化は避けられない。01年度から08年度にかけて、「士」の階級の平均年齢は21.9歳から22.5歳、「曹」クラスは同じく36.9歳から37.3歳へと、じわりと上がった。
最後の望みをかけて2010年度予算の概算要求に盛り込んでいた増員要求も、行政刷新会議で「見送り」の判定が出され、実現しなかった。
防衛省の担当者は「現在の景気では、任期を満了した隊員が辞めない傾向は当面続くだろう」と述べ、隊員の高齢化への対応策がない現状に、危機感を募らせている。(土居貴輝)