射撃の教育を受ける新隊員=陸上自衛隊第1師団ホームページから
18〜26歳を対象に2〜3年の任期付きで採用される「任期制自衛官」への道が「超狭き門」になっている。厳しい雇用情勢を反映し、任期を満了しても民間へ転職せず部隊に残る自衛官が増え、新規採用枠が圧迫されているためだ。2009年度の採用予定者数は20年前の1割強にまで激減。不況のあおりで第一線の若手の層が薄くなることに、防衛省では懸念の声が出始めている。
任期制自衛官は、本人が希望すれば任期終了後に任期を更新することができる。好況時には満了後に民間に転じる隊員が増えるが、民間の雇用情勢が悪化すると隊に残る隊員が増える。景気の動向に左右されやすいのが特徴だ。
09年度に防衛省が計画している任期制自衛官の採用予定者数は約2550人。08年度当初の採用計画と比べて30%程度、20年前の1989年と比べると約12%にとどまる。
防衛省は08年度、任期制自衛官の採用試験の受験者約2万300人のうち、約8800人を「仮合格者」とした。
だが、同年秋に米大手証券が経営破綻(はたん)したリーマン・ショックの後、採用内定取り消しや非正規社員の雇い止めなど、民間の雇用情勢が急速に悪化すると、隊内では満了後も再度任期を継続する隊員が続出。当初計画の半分程度の約4600人しか採用できなかった。任期満了を迎える退職見込み者の数から採用計画を立てていたため、合格したのに採用されない「入隊保留者」が約520人も発生する異常事態となった。同省幹部は「厳しい民間の就職事情をみて『こんなときに辞めて就職活動をするよりは』と残留を選ぶ隊員が多いことが背景にあるのでは」とみる。
このため09年度の採用計画は慎重にならざるをえなくなった。倍率が08年度の4.3倍を上回るのは確実とみられている。
任期のない一般的な自衛官も倍率が08年度時点で約4倍といい、防衛省によるとやや高めの傾向という。