週末のダイヤを大混乱に陥れた東海道新幹線の停電事故は、架線でも車両でもなく、作業員のボルト付け忘れという単純な人為ミスが原因だった。JR東海は「普段から人為ミス防止に向け、対策や教育をとっているが、機能しなかった」と釈明した。
JR東海などによると、事故で外れたパンタグラフ上部の「舟体(ふなたい)」には、架線から車両に電気を取り込む「集電舟」などがある。
通常、舟体は年数回ある本格検査の際しかボルトの着脱は行わないという。簡易検査主体の大井車両基地にとっては、今年度初の作業だった。
ただ、ボルトを付け忘れた社員2人はそれぞれ3年と10年程度の経験しかない若手と中堅だったとはいえ、確認役の車両技術主任は約30年の経験を持つベテランだった。3人は事故後の同社の聞き取り調査に、当初は「自分たちは、しっかりやった」と話したという。しかし、同時に交換を行った6号車のパンタグラフには付いていた確認マークが、12号車には付いておらず、付け忘れであることがはっきりした。
ボルトがないまま1千キロ以上走りながら、事故までの間、パンタグラフが外れなかったのは、偶然でしかない。上からのしかかる舟体の重さと、下からバネの力で伸びようとするアームで「サンドイッチ状態」になっていたのだ。
同社関係者は「脱線などに発展するミスではない」というものの、舟体とアームの重さはそれぞれ約12キロあり、市街地などで起きれば大事故に発展するおそれもあった。
また、ボルトはパンタグラフ以外にも使われるため、作業後に余っていても付け忘れに気づきにくかったという。にもかかわらず、チェックシートなどでミス防止の仕組みを取っていなかった。