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続・児童虐待

柳美里

長谷川 それは事実としては変えられないけれど、事実に対する心理的な意味づけは変えられるでしょう。過去の実際の出来事が重要なのではなくて、それに付帯しているはずの心理的事実、それを探し出して、私はあのときこうだったんだ、と捉え直すことはできる。

 私はずっと、どうやったらこの現状を打破できるんだろうか、というところでもがき苦しんでいたんですよ。

長谷川 柳さん、現状という誘惑に敗けないでください。出来事に目を奪われ過ぎると、心に思いを巡らせることができなくなってしまいます。柳さんの場合は、自分の心を思い描くことすら、まだ覚束ない状態なので、どうしても、目の前で展開されるトラブルに目が向かってしまいがちですね。これはある意味、麻薬ですよ。目の前に見えるものに囚われ過ぎないでください。

 自分の心を思い描くことすら覚束ない状態なんですか、私は……。

長谷川 ここで、柳さんにとって一つの戦略になるのは、夢ですね。今後は、微睡んでいるときに、ふっと何かが現れたりよぎったりする白昼夢のような体験をするかもしれない。この問題に関しては、頭で追究しようとするのではなく、ぷくっぷくっとあぶくのように湧いてくる心底の動きをキャッチしてみましょう。そして、それをヒントにして心と頭の両方で感じ考える。その積み重ねで、最後には柳さんのものの見方、解釈の仕方、そしてひととの折り合いのつけ方まで、あらゆるものとの関り方がシフトする可能性があります。

今日は、このあたりで終わりにしましょう。

つづく

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コメント / トラックバック1件
  1. あがた より:

    柳美里さんの壮絶な人生に驚きを隠せません。しかし意味の無いものは何も無いと私は思っています。偶然は無くすべて必然だと。氏にとっては必要な出来事だったと思います。そして氏に耐える力があるからこその試練だと。神は耐えられない試練には会わせないというのは本当だと思っています。人は与えられた人生出来事を受け止めた時その方の使命が輝きでると信じるからです。現に氏の文章に由って多くの人が癒されているのではないでしょうか。長谷川先生のおっしゃるようにご自分を受け入れてくださいませ。私は専門化ではありません。ですがこれまで生きて来た中でこのことは間違いないということを身をもって知りました。例え世界中の人間があなたを見捨るようなことがあっても柳美里さんあなただけはあなたを抱きしめてください。受け入れてください。そのままのあなたを。どこまでもどこまでも受け入れてください。

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COURRiER Japon
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    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

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