長谷川 それは事実としては変えられないけれど、事実に対する心理的な意味づけは変えられるでしょう。過去の実際の出来事が重要なのではなくて、それに付帯しているはずの心理的事実、それを探し出して、私はあのときこうだったんだ、と捉え直すことはできる。
柳 私はずっと、どうやったらこの現状を打破できるんだろうか、というところでもがき苦しんでいたんですよ。
長谷川 柳さん、現状という誘惑に敗けないでください。出来事に目を奪われ過ぎると、心に思いを巡らせることができなくなってしまいます。柳さんの場合は、自分の心を思い描くことすら、まだ覚束ない状態なので、どうしても、目の前で展開されるトラブルに目が向かってしまいがちですね。これはある意味、麻薬ですよ。目の前に見えるものに囚われ過ぎないでください。
柳 自分の心を思い描くことすら覚束ない状態なんですか、私は……。
長谷川 ここで、柳さんにとって一つの戦略になるのは、夢ですね。今後は、微睡んでいるときに、ふっと何かが現れたりよぎったりする白昼夢のような体験をするかもしれない。この問題に関しては、頭で追究しようとするのではなく、ぷくっぷくっとあぶくのように湧いてくる心底の動きをキャッチしてみましょう。そして、それをヒントにして心と頭の両方で感じ考える。その積み重ねで、最後には柳さんのものの見方、解釈の仕方、そしてひととの折り合いのつけ方まで、あらゆるものとの関り方がシフトする可能性があります。
今日は、このあたりで終わりにしましょう。
つづく
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