G2
G2G2
ノンフィクション新機軸メディアG2・・・・・・・・G2の最新情報をお届け!!「『G2メール』登録はこちら」ノンフィクション新機軸メディアG2・・・・・・・・G2の最新情報をお届け!!「『G2メール』登録はこちら」
G2

続・児童虐待

柳美里

 今、息子が彼をすごくかばってるんですよ。私が彼に不満や怒りの矛先を向けようものなら、「ママ、それは心の中で思ってるだけにしな。お兄さんには絶対言っちゃ駄目だよ、喧嘩になるから」とか注意するし、私が彼を怒鳴りつけると、「お兄さんは、言わなくてもわかってるって!」とか「お兄さんは、嫌だって!」とか、完全にあっちの味方につくんです。

長谷川 息子さんは、小学校時代の柳さんと似ていますね。同じ役割を担っている。大人の世界を生きている。大人の理屈で判断している。大人の目で物事を捉えようとしている。それでも、今の柳さんにとっては息子さんの問題に目を向けるのは、時期尚早です。

 でも、今、長谷川さんは、息子が子ども時代の私と同じ役割を担っているとおっしゃいましたよね? そうすると、息子が、大人になって、結婚して親になったら、やっぱり、今の私みたいに自分の子どもにどう接していいか困るようになるんでしょうか?

長谷川 でしょうね。今後、息子さんに救いの手がはいれば別ですが。

 救いの手というのは、第三者ということですか? 同居している彼ではない? 彼は息子の支えにならないんですか?

長谷川 うん。だって、息子さんが彼に加担しているということは、それだけ彼をモデルとしてね、同一化していく度合が高いということにもなるんですよ。男の子は身近な男性をモデルにしてアイデンティティを形成しやすい。で、息子さんがモデルにするのは、怒りの矛先を自分に向けて、自分の顔や体を殴りつけるという彼の自虐的なスタイルですよ。それは、つまり、悪いことをして叱られる、という今の息子さんのスタイルと裏腹な関係にあります。息子さんは、すでに叱られるために敢えて悪いことをするという、大人との自虐的な関係性の中で生きているんですね。おそらく息子さんは「ぼくは叱られる子なんだ」という自己信念を作りかけている。その信念を崩すためには、どんなに悪いことをしても、どんな嘘を吐いても、叱らないという処方箋が出てきます。嘘を吐いても叱られなかったら、それまでのパターンは崩されて嘘は吐けなくなる。

このほかの作品
コメント / トラックバック1件
  1. あがた より:

    柳美里さんの壮絶な人生に驚きを隠せません。しかし意味の無いものは何も無いと私は思っています。偶然は無くすべて必然だと。氏にとっては必要な出来事だったと思います。そして氏に耐える力があるからこその試練だと。神は耐えられない試練には会わせないというのは本当だと思っています。人は与えられた人生出来事を受け止めた時その方の使命が輝きでると信じるからです。現に氏の文章に由って多くの人が癒されているのではないでしょうか。長谷川先生のおっしゃるようにご自分を受け入れてくださいませ。私は専門化ではありません。ですがこれまで生きて来た中でこのことは間違いないということを身をもって知りました。例え世界中の人間があなたを見捨るようなことがあっても柳美里さんあなただけはあなたを抱きしめてください。受け入れてください。そのままのあなたを。どこまでもどこまでも受け入れてください。

コメントをどうぞ
コメントは送っていただいてから公開されるまで数日かかる場合があります。
また、明らかな事実誤認、個人に対する誹謗中傷のコメントは表示いたしません。
ご了承をお願いいたします。

COURRiER Japon
  1. サイト内検索
  2. 執筆者

    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

  3. このほかの作品