柳 でも、そんなひとって、いるんでしょうか? この世に存在する一つ一つの家庭を取材して歩いたわけじゃないから、はっきりしたことは言えないけど、みんな、いろいろな問題を、もちろん大したことないものから深刻なものまで程度の差はあるだろうけど、どの家庭も秘密や問題を抱えてるんじゃないでしょうか? そんな夢みたいな人生を送ってるひと、いないんじゃないかな?
長谷川 それは今の柳さんの認識上いないということなんですよ。美里ちゃんの心で願望としての家庭を描けるようになったら、初めて、自分が育った家庭を嘆くことができるかもしれない。まだ、嘆くことができないんですよ。自分を責めることは得意なんですけどね。そして、息子さんとの関係で自己嫌悪に苛まれる。「自分が悪いんだ。自分なんていなければいい。消えてしまいたい」と思う。でも、肝心の自分を慈しむこと、自分に優しくすることが、柳さんにはできない。優しくされた、慈しまれたことがないから、それがどういうものか解らないんですよ。
同居人の彼を息子がかばう
柳 それはアレですか、同居している彼に対して厳しく接してしまうのも、そういうことが原因となっているんでしょうか?
長谷川 うん。知人程度ならいいんですが、心の距離が近づいてくると、お互いに、相手の自分と違うところを尊重し合わないとやっていけませんよね? けれど、柳さんも彼も、尊重し合うことに関して不器用なんじゃないですか? 意見の主張し合いがエスカレートして、自分の思い通りにならなくて感情が爆発してしまう。
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