長谷川 それは大人の柳さんの判断で、子どもの美里ちゃんは、そんなことを考えない。
ここが、最初に越えなくてはならない大きな壁になると思います。美里ちゃんの魂を、美里ちゃんだけの魂を、ガッ、ガッ、ガッと疵つけながら、殺してしまう寸前まで痛めつけた。美里ちゃんの魂をここまで痛めつけたのは、お母さんなんですよ。
ほんとうなら、学校でイジメられたり、隣の家のおじさんにイタズラされて帰ってきたりしたら、美里ちゃんを優しく抱っこして、「美里ちゃん、どうしたの?」って……「あのね、あのね……」って美里ちゃんがなかなか言えなかったら、「お母さん、どんなことがあっても美里ちゃんの味方だから、話してごらん?」って……それで、美里ちゃんが「こんなことされた。こんなこと言われた。すごく痛かった。すごく嫌だった。すごく苦しかった」とお母さんに打ち明けたら、「痛かったね、嫌だったね、苦しかったね」といっしょに泣いてくれて、「話してくれてありがとう。お母さんはね、美里ちゃんのこと大好きよ」と抱きしめてくれる、美里ちゃんのお母さんは、そんなお母さんであるべきだったんじゃないですか?
柳 でも、なかなか、みんな、こうあるべきだ、というものにはなれないですよね。
「母性」が何か解らない
長谷川 まぁ、そこまでやってあげられるお母さんというのは、現実的にはいないに等しいのかもしれないけれど、理想のお母さんというものがあるとしたら、その対極が、柳さんのお母さんなんじゃないですか? 子どもを育む親とは対極の、子どもを疵つける親、子どもの魂を奪う親です。
お母さんのことを、これだけ酷評されると、どんな気持ちになる? 堪えられる?
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