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続・児童虐待

柳美里

泣きじゃくる母親の記憶

 理想が、描けない……。

長谷川 じゃあ、お母さんのことで、今なにかエピソードが浮かぶ?

 先ほどお話しした大家さんの敷地内にある離れで暮らしていたころの話なんですけど、母が裸足で玄関から飛び出して、韓国語で「オンマー!」と叫んで、「オンマー」っていうのは、小さい子どもが母親を呼ぶ「ママ」みたいなニュアンスの幼児語なんですけど、「オンマー! オンマー!」って手放しで泣きじゃくってたんですよ。

長谷川 柳さんがいくつぐらいの時?

 えーと、小学一年ぐらいですかね……二年かな……。

長谷川 やっぱり、かわいそうだと思いましたか?

 いや、料理とか掃除とか、何かをやってる最中に、衝動的に飛び出しちゃったんで、あぁ、料理でしたね、まな板で野菜を刻んでる最中だったような気がします。やりかけのまま、外に飛び出したんですよ。びっくりして追いかけたんだけど、裸足だったし、泣いてたし、韓国語だったし……「ママ、どうしたの?」って声を掛けられるような雰囲気じゃなかったから、玄関の戸口で黙って見てましたね。かわいそうとか、怖いとかより、なんで泣いてるんだろうって……。

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コメント / トラックバック1件
  1. あがた より:

    柳美里さんの壮絶な人生に驚きを隠せません。しかし意味の無いものは何も無いと私は思っています。偶然は無くすべて必然だと。氏にとっては必要な出来事だったと思います。そして氏に耐える力があるからこその試練だと。神は耐えられない試練には会わせないというのは本当だと思っています。人は与えられた人生出来事を受け止めた時その方の使命が輝きでると信じるからです。現に氏の文章に由って多くの人が癒されているのではないでしょうか。長谷川先生のおっしゃるようにご自分を受け入れてくださいませ。私は専門化ではありません。ですがこれまで生きて来た中でこのことは間違いないということを身をもって知りました。例え世界中の人間があなたを見捨るようなことがあっても柳美里さんあなただけはあなたを抱きしめてください。受け入れてください。そのままのあなたを。どこまでもどこまでも受け入れてください。

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COURRiER Japon
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    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

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