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続・児童虐待

柳美里

長谷川 その大家さんの家も、大変な家だったんですね。ひと言でいうと「秘密のある家」なんですよ。秘密を隠蔽し維持するために、家族一人ひとりがそれぞれの役割を担っている。お母さんは、料理や洋裁で子どもに手をかけることによって、子どもを愛しているかのように演出している。でも、それは「かのように」であって、料理や洋裁に没頭することによって、家の内のドロドロした面から目を背けていることになるんですね。「否認」という防衛機制が働いているわけです。そして、大抵の場合は、自分の夫がそういう秘密を持っていることに気づいているんですよ。

 あのお母さんが、気づいてた? 気づいてて、黙ってたんですか?

長谷川 このテーブルの上にはアップルジュースがある。もちろん、視界には入っている。なのに、「テーブルの上に、何か置いてないですか?」と訊くと、「何もないです」と答える。見ようともしないで、「ないです」と言ってしまうんですよ。そして、それにまつわる自分の思いや感情も認めない。思いや感情があるということになると、事実がないということが破綻してしまうからね。否認と合理化はセットになっているんですよ。
柳さんは、自分の母親に対しては「かわいそう」という思いしかなかった。別の感情、負の感情は否認されている可能性がありそうです。そして父親に対する感情がない、ということは母親の場合よりも強い否認が働いている。れっきとした事実でも、感情を飛ばすことによって、その一部は、認識から逃れられる。事実でも、全てを生々しく覚えているわけではない。問題とすべきは、そういった事実に付帯している思いなんですね。それで、今日は理想のお父さん、理想のお母さんのもとで、どんな風に育ちたかったんだろう、と柳さんの思いをお訊ねしたかったんです。

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コメント / トラックバック1件
  1. あがた より:

    柳美里さんの壮絶な人生に驚きを隠せません。しかし意味の無いものは何も無いと私は思っています。偶然は無くすべて必然だと。氏にとっては必要な出来事だったと思います。そして氏に耐える力があるからこその試練だと。神は耐えられない試練には会わせないというのは本当だと思っています。人は与えられた人生出来事を受け止めた時その方の使命が輝きでると信じるからです。現に氏の文章に由って多くの人が癒されているのではないでしょうか。長谷川先生のおっしゃるようにご自分を受け入れてくださいませ。私は専門化ではありません。ですがこれまで生きて来た中でこのことは間違いないということを身をもって知りました。例え世界中の人間があなたを見捨るようなことがあっても柳美里さんあなただけはあなたを抱きしめてください。受け入れてください。そのままのあなたを。どこまでもどこまでも受け入れてください。

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COURRiER Japon
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  2. 執筆者

    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

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