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続・児童虐待

柳美里

 う〜ん、でも、私にとって小説を書くということは、自分の疵のかさぶたを剥がして、疵口に指を突っ込んで、もう一度血を流して、もう一度痛むみたいな行為なので、一般社会で仕事をして、かさぶたを隠して、疵を負ったことを言わないでいる方たちとは違うんじゃないかと。決して特権意識を持っているわけではないんですが、書くことを仕事に選んだ十八歳のころから逃亡犯みたいに完全に孤立して、将来もない、居場所もない、誰にもなつかない、という野良犬みたいな生き方をしてきたので、自分に踏み込むことに関しては、躊躇いを感じません。虚勢というか、啖呵みたいなものかもしれませんが(笑)。

長谷川 ここまでカウンセリングを行ってきて、多少ショックを受けたところはなかったですか?

 うーん、そうですね……母親の言動が虐待の範疇にはいると指摘されたことですかね……。

長谷川 うん。柳さんは、かわいそうだと思っていたからね。

 彼女なりに精一杯がんばっていましたからね……。

理想の母親って、どんな母親なのか……

長谷川 でもそれ、ご自身にも同じことが言えるんじゃないですか? 過去の疵を抱え、仕事を抱え、我が子を他人に迷惑をかけない人間に育てたいという親としての願いを抱えて、精一杯がんばっているんじゃないですか?

 私は、それを息子に言ってしまっているんです。言うことを聞かなかったり、嘘を吐かれたりするたびに、「ママは、毎日毎日精一杯がんばってるのに、あんたはなんなのッ! ママの邪魔をするために生まれてきたのッ!」って……。

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コメント / トラックバック1件
  1. あがた より:

    柳美里さんの壮絶な人生に驚きを隠せません。しかし意味の無いものは何も無いと私は思っています。偶然は無くすべて必然だと。氏にとっては必要な出来事だったと思います。そして氏に耐える力があるからこその試練だと。神は耐えられない試練には会わせないというのは本当だと思っています。人は与えられた人生出来事を受け止めた時その方の使命が輝きでると信じるからです。現に氏の文章に由って多くの人が癒されているのではないでしょうか。長谷川先生のおっしゃるようにご自分を受け入れてくださいませ。私は専門化ではありません。ですがこれまで生きて来た中でこのことは間違いないということを身をもって知りました。例え世界中の人間があなたを見捨るようなことがあっても柳美里さんあなただけはあなたを抱きしめてください。受け入れてください。そのままのあなたを。どこまでもどこまでも受け入れてください。

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COURRiER Japon
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    柳美里柳美里
    (ゆう・みり)
    1968年生まれ、神奈川県出身。劇作家、小説家。1993年に『魚の祭』で岸田戯曲賞を、1997年には『家族シネマ』(講談社)で芥川賞をそれぞれ受賞。『ゴールドラッシュ』(新潮社)、『命』(小学館)、『柳美里不幸全記録』(新潮社)など、小説、エッセイ、戯曲の作品多数。

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