1月23日に開かれた第126回患者塾のテーマは「医療健康情報の伝え方」。医療健康情報の在り方や接し方にも話が及び、医師や歴代患者塾担当記者が議論を深めた。
<飯塚市の43歳女性> 「がんと闘う女性」といった報道がよくあります。確かにその姿勢は素晴らしいと思いますが、その人がきちんと検診を受けていたのかどうかなどの報道が足りず、訴えるべき点では欠けているように思います。
神戸さん ドキュメンタリーなどでがんと闘う人を取り上げる時、「いつ、どうやって気付いたか」という点は必須です。報道でも触れたとは思いますが「検診が遅れたのでは」という観点ではなかったと思います。確かにこういう視点は必要で、ニュース終了後に検診が受けられる場所などの情報を流すことは可能でしょう。
宮本支局長 直接経験した記者が取材すると内容も違ってくると思います。私も昨秋、体調を崩し検査で大腸に直径4ミリのポリープが見つかりました。現在は「様子を見ましょう」と言われていますが、今の私が医療を担当したら、より患者側に立った視点が加えられると思います。
<北九州市の72歳女性> 新聞やテレビで、広告・CMと報道の区別がつかないことがあります。新聞に大きく掲載されているのでいいものだろうと考えてある健康食品を買いましたが、後になって広告と知りました。もう少し大きく広告と断って掲載すべきではないでしょうか。
小野村さん 米国の健康雑誌などの「1円玉を張ったら、ひざの痛みが治る」という記事は、出す側も読む側も「これは健康エンターテインメント」と認めています。日本人はまじめです。もう少し余裕があってもいいかなと思います。
小川支局長 雑誌などに「何週間で何キロやせた」という記事もありますが、小野村さんの言うように健康エンターテインメントという部分もあると思います。私も大腸がんの手術後、知人がくれたキノコの抗がん食品を飲みました。びっくりするような値段だったので、もらったもの以外は飲んでいませんが。不安があれば何かにすがりたい気持ちはあると思います。
津田さん かつて父がキノコ系の、がんに効くとされる食品を飲んでいた時は止めませんでした。民間療法を考える時の問題は、副作用がないことと値段が高くないこと。その二つを考えて選ぶのが大事です。
小野村さん 害がなく、ひょっとしたら効くかもしれないものならば、お金が許せば使ってみてもいいでしょう。金銭的にきついなら、やめたほうがいいと思います。
昨年見た邦画で個人的なベスト1は「ディア・ドクター」だ。山あいの小村の診療所で働く主人公の医師を演じた笑福亭鶴瓶の存在感が圧倒的だった。
主人公はへき地医療に奔走し、お年寄りなど村民から絶大な信頼を集めるが、実は「大きなうそ」をついている。ある日突然失そうしたことから、真実が浮かび上がっていく。
映画は「大きなうそ」を通して、患者にとってホンモノの医師とは何だろう、という問いを投げ掛ける。治療の腕なのか、権威なのか。いや、やはり大事なのは……。そんなことを考えさせられた佳作だ。【佐藤敬一】
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伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院副院長(外科)
平田敬治さん=福岡山王病院外科部長(福岡市)
津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院院長(水巻町)
仲野祐輔さん=八屋第一診療所院長(豊前市、外科)
神戸金史・RKB毎日放送報道部長
宮本勝行・毎日新聞大分支局長
武内靖広・毎日新聞西部本社編集制作センター副部長
小川敏之・毎日新聞佐世保支局長
小野村健太郎さん=おのむら医院院長(芦屋町、内科・小児科)
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〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2010年2月9日 地方版