きょうの社説 2010年2月9日

◎輪島塗が無形遺産に 「漆はジャパン」の発信戦略を
 ユネスコの無形文化遺産に、輪島塗(重要無形文化財)が2013年に登録される見通 しが県から示された。文化庁は重要無形文化財、重要無形民俗文化財、選定保存技術の3分野から指定の古い順にユネスコに提案する方針を決めており、輪島塗(1977年)の指定順位を考えれば、早期の登録が期待されていた。3年後の実現が確実視されるなら、そこに照準を定めて「登録」を生かす準備を始める必要がある。

 県内では昨年、奥能登の「あえのこと」が無形文化遺産に登録された。このような風俗 慣習や芸能などと違って、工芸技術はそれが地場産業としての広がりを持つほど登録の波及効果が大きい。漆や漆器を意味する「ジャパン」という呼び名は、言葉の意味としては通じにくくなっているなかで、世界的な知名度が高まるユネスコ登録は「漆はジャパン」を国内外で再び広げる好機である。満を持して発信戦略を練り上げたい。

 2006年に発効された無形文化遺産保護条約を受け、文化審議会の特別委員会は国内 の候補について、重要無形文化財など3分野から選び、指定順が同時期の場合は地域バランスに配慮して選定する方針を打ち出している。昨年は全国で13件が登録された。

 重要無形文化財のうち工芸技術には、「染織」「陶芸・漆芸・手漉和紙」の区分があり 、昨年はそれぞれの区分で指定時期が最も早い「小千谷縮・越後上布」と「石州半紙」の登録が決まった。「陶芸・漆芸・手漉和紙」に属する輪島塗は指定順でいけば、本美濃紙、色鍋島、柿右衛門の後になる。

 輪島塗の販路開拓では、ニューヨークに常設展示場を開設し、パリなどの展示会にも出 展している。重要無形文化財の工芸のなかでも、輪島塗の近年の海外展開には目を見張るものがある。ユネスコ登録は世界的なブランド力を得る絶好の追い風になるだろう。

 優れた技術を海外に発信するには、日本的な「用の美」にこだわるだけでなく、欧米人 に好まれる用途やデザインなどを開発する必要がある。世界に通じる「用の美」を追求していくことはユネスコ登録へ向けた戦略の柱でもある。

◎議員の資産公開 普通預貯金も報告義務に
 衆院議員資産等報告書で、ほぼ半数近い議員が「預貯金ゼロ」と報告したのは、定期の 預貯金ではなく、普通預貯金や「たんす預金」のかたちで現金を保有しているからだろう。小沢一郎民主党幹事長は、自身の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、土地購入費に際して、手持ちの4億円を用立てたと説明したが、今回も含めて常に預貯金や金銭信託をゼロと報告している。資産状況の実態を反映していない証拠である。普通預貯金や手持ちの現金についても報告義務を課すよう国会議員資産公開法を改正すべきではないか。

 現行制度で報告が義務付けられているのは、土地、建物、定期の預貯金、株式、100 万円を超える自動車などで、普通預貯金や現金、宝石、貴金属などは対象外となっている。資産がどれだけあっても普通預貯金に大金を入れておいたり、自宅や事務所で保管しておけば、いくらでも資産は少なく見せられるのである。

 低金利時代ゆえに、懐具合を国民に知られたくない議員は、定期預貯金にしておく必要 性を感じないはずだ。これでは「国会議員の資産の状況等を国民の不断の監視と批判の下におく」という法の趣旨が骨抜きにされていると言わざるを得ない。

 頻繁に出し入れする普通預貯金や手持ちの現金をすべて公表することには議員の抵抗が 強く、プライバシーの保護を理由に反対する声が根強くある。だが、政治団体の収支報告書については不透明さの批判が高まり、2007年成立の改正政治資金規正法で、1円以上の全領収書の公開が決まった。

 これに対し、資産公開制度は1993年にスタートした後、一度も見直しが行われてい ない。「自主申告」を基本とし、記述内容を裏付ける書類の添付も義務付けられておらず、虚偽記載への罰則規定もない。実態と懸け離れた内容になるのも無理はないだろう。

 小沢幹事長や鳩山由紀夫首相の「政治とカネ」の問題に国民の批判が強まるなか、政治 家の資産形成の面においても透明性を高める努力をすべきだ。