きょうのコラム「時鐘」 2010年2月9日

 他人の懐をのぞいても仕方がないが、衆院議員の資産公開に目がいく。鳩山首相は16億円余。麻生前首相は1けた間違えた、と中身を一部訂正した

話が大き過ぎて、うらやましさもねたましさも消し飛んでしまう。小沢幹事長は預貯金「ゼロ」。公開の対象は定額預貯金のたぐいで、普通預金や億単位のたんす預金があっても、ゼロでまかり通る。何かすっきりしない。額面通りに受け取れる話だろうか

正直者はバカを見る。北陸が生んだ宗教家・暁烏(あけがらす)敏(はや)を招いた説法の場で、聴衆の一人がそう言って世を嘆いたそうである。それなら尋ねるが、と暁烏は口を開き、「この中に正直者がいるなら出て来い」。会場は静まり返った

程度の差はあれ、ウソやごまかしとの付き合いは誰にでもある。ウソをつくから、相手のウソにもピンとくる。やがて、許せるウソと許し難いごまかしとの区別もできるようになる。ウソにも功罪がある

内閣支持率41%、不支持45%。ウソの回答もあるかもしれないが、世論調査には資産公開のようなからくりはない。いささかマユツバの数字の周囲に、そうでない重い数字が並ぶ。