TBSニヤッ…“金欠”亀田ファミリーに新たな「金脈」

2010.02.08


興毅(左)とともに日本初の兄弟王者となった大毅(中)。三男の和毅(右)も世界挑戦へGOサイン待ちだというが【拡大】

 7日夜に行われた世界ボクシング協会(WBA)フライ級タイトルマッチで、亀田大毅(21)=亀田ジム=が3−0の判定勝ち。兄・興毅(23)=同=とともに日本人初の兄弟世界王者となった。亀田側とすれば“筋書き通り”の勝利だったが、WBAが最初の防衛戦の相手として義務づけているのは、亀田家と深い因縁を持つ協栄ジムの坂田健史(30)だ。目下、法廷闘争中の両陣営の対決となる新たな遺恨マッチは、亀田家にとって次なる金脈となるのか。

【90日以内に坂田と対戦】

 神戸・ワールド記念ホールで行われたデンカオセーン(タイ)との再戦は、昨年10月の対戦と同じく判定に持ち込まれたが、勝敗は逆となった。大毅は、勝ち名乗りを受けると「21年間生きてきて一番うれしかった。センスもなくて、才能もないオレがここまで来られたのも、全部家族のおかげやと思う」と涙でグシャグシャになった。

 相手の2度にわたるホールディングによる減点、セコンドについた兄・興毅らの支えもあったが、今回の勝利に最も大きな貢献をしたのは巧みなマッチメークだろう。

 いいところなく3度目の防衛に失敗したデンカオセーンは昨年末、周囲の関係者に「できれば苦しいことはしたくないからベルトを売りたい」と冗談交じりに語るなど、やる気のなさが伝わっていた。33歳という年齢によるスタミナの衰えも顕著となり、世界ランカーなら誰でも勝算が立つ。

 そんなおいしい王者との世界戦を、亀田陣営は先にほぼ確定していた別の挑戦者から強引な“寝業”でひっくり返して、自分のところに持ってきた。再戦を実現した時点で大毅は勝ったも同然だったのだ。

 その“寝業”の犠牲者となり、おいしいチャンスをかっさらわれたのが協栄ジム、そしてデンカオの前の同級王者の坂田だ。そもそもデンカオ側から坂田陣営に試合の打診があり、昨年10月に正式契約まで結んだが、11月になってWBAが「坂田がここ2戦、スーパーフライ級で試合をしている」という不可解な理由で承認は見送りに。代わりの挑戦者がよりによって大毅では、協栄ジムの金平会長がWBAと亀田陣営との関係を勘ぐるのも当然か。

 金平会長と亀田家の因縁は深い。2005年に3000万円ともされる移籍金を払って興毅を引き抜き、大毅とも契約したが練習環境などをめぐって衝突。07年に大毅が内藤大助との世界戦で反則を連発すると、世間から猛バッシングを浴びた上に自身も3カ月のクラブオーナーライセンス停止処分となり、心労から胃潰瘍(かいよう)を患い体重は20キロ減った。両者の関係修復は絶望的となり、08年5月に契約を打ち切り。昨年9月には約1億円のギャラが未払いとして亀田側に訴えられ、今も係争中だ。

 そんな経緯があり、坂田としても泣き寝入りはできない。協栄ジムが強く求めたこともあり、WBAは先月30日になって公式文書を発行、デンカオ−大毅戦の勝者が坂田と90日以内に戦うことを義務づけた。

 裁判で争う相手とリングの上で決着をつける構図は劇的ではあるが、格闘技ジャーナリストの片岡亮氏は「(亀田大は)知名度が低い実力派の外国人とやるくらいなら、坂田のほうがいい。スタイル的にも最も避けたい一発KOを食らう危険度も低い」と実利面を指摘。もちろん両陣営の遺恨が耳目を集めることは、TBSを始めとする「亀田3兄弟ストーリー」の担い手側も大歓迎だろう。

 さらに片岡氏は「今回の世界戦でデンカオのファイトマネーは2000万円前後ともいわれるが、試合前までに亀田側から支払いがなく、試合をボイコットする寸前だったという情報がある」ともいう。

 理由は定かでないが、それなりの収入があるはずの亀田陣営が、よほど金欠ならば、「興毅vs内藤」と匹敵する「大毅vs坂田」の遺恨関係で商売しない手はない。デンカオのファイトマネーどころか、法廷で争っている1億円の未払いまで、一気に解決してくれる可能性を秘めている。

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