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飲酒運転事故、悪質常習者絶えず、厳罰化も年200件超/神奈川

2010年2月7日

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 横浜市緑区の飲食店に酒を飲んだ男が運転する軽乗用車が突っ込み、男性客3人が死傷するという痛ましい事故が起きた。逮捕された男は近くの知人女性宅で酒を飲んでいたとみられ、県警は罰則の重い危険運転致死傷の適用も視野に捜査を進めている。同罪の新設などを機に飲酒絡みの事故は減ったが、それでも県内で年間200件以上起き、多数の死者が出ている。どうすれば悪質な飲酒運転を根絶できるのか―。今回の事故は重い課題をあらためて突き付けている。

 「酒を飲んでいるのは一目で分かった」。飲食店の店主や現場に駆け付けた人は証言する。1月29日夕、「雷が落ちたような音」とともに突っ込んできた車。めちゃめちゃになった店内でぼうぜんとしていた男の周囲には、強いアルコール臭が漂っていたという。

 男は自動車運転過失傷害容疑で現行犯逮捕され、酒気帯び運転の基準(呼気1リットル当たり0・15ミリグラム)を大きく超える0・7ミリグラムのアルコールが検出された。一般的に運動機能の低下などがみられる深酔いの初期状態とされ、「かなりの酒量」(県警幹部)だったことをうかがわせた。

 危険運転致死傷罪(2001年)やドライバーへの酒類提供などの助長行為に対する罰則(07年)、酒気帯び、酒酔い運転の違反点数の引き上げ(09年)―。近年の厳罰化で飲酒運転事故は全国的にも減ったが、酒量の多い悪質なドライバーは絶えない。

 飲酒により正常に運転できない状態で事故を起こしたとして、危険運転致死・同致傷容疑で県警に摘発されたドライバーはこれまでに計54人。県内では昨年、飲酒絡みの死亡事故は5件(死者5人)と最近10年で最少だったが、このうち2件はほぼ酩酊(めいてい)状態だった。

 昨年2月19日未明、海老名市内の県道カーブ。ハンドル操作を誤りスピンした乗用車が電柱に衝突、助手席の男性=当時(21)=が帰らぬ人となった。

 海老名署などによると、運転していた男(21)は居酒屋で2人でウイスキーのボトルを空け、車で帰宅途中。事故直後、呼気から検出されたアルコールは1・15ミリグラム。男は危険運転致死容疑で逮捕され、懲役5年の有罪判決を受けた。

 この事故の約1週間前には、伊勢原市内でオートバイが転倒し、乗っていた男性が死亡したが、呼気1・45ミリグラムに相当する血中アルコールが確認された。歩くことさえ困難な酒量だったとみられるという。

 「時間がたっているので大丈夫と思った」「目的地が近かった」「酔っていないと思った」―。飲酒運転をするドライバーの心理は、県警と国立病院機構久里浜アルコール症センター(横須賀市)が07~08年に免許取り消し処分者約1400人に行ったアンケートに表れている。

 結果を分析した同センターの中山寿一医師は「飲酒運転の常習者は『いつも運転しているが平気』『事故は起こさない』などと軽く考える傾向が強い」とした上で、「厳罰化だけで飲酒運転事故や死者をさらに減らすのは困難。免許取得や更新時はもちろん、子どもへの教育にも力を入れ、危険性をもっと知らしめる必要がある」と指摘する。

 2年前、焼酎を飲んだ直後にハンドルを握り、横浜市内で人身事故を起こした30代の男性は、自責の念に駆られている。「飲酒運転で何もかも失い、人生が変わってしまった」


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