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【格闘技】

亀田大毅 涙の兄弟王者

2010年2月8日 紙面から

◇WBA世界フライ級タイトルマッチ

 日本人初の兄弟世界王者や−。亀田3兄弟の次男・大毅が、王者デンカオセーン・カオウィチット=タイ=に3−0の判定勝ち。3度目の世界挑戦で王座を奪取した。WBC世界フライ級王者で長男の興毅に続き、3兄弟の“劣等生”が戴冠。国内初、世界19組目の兄弟世界王者が誕生した。大毅は試合後、リング上から2年前の内藤大助戦の反則行為を涙ながらに謝罪した。 

 レフェリーに手を上げられると、涙が込み上げてきた。大毅は顔をクシャクシャにして兄・興毅と抱き合った。夢にまで見た兄弟王者。2人でじっくり喜びを分かち合った。

 序盤はまるで前戦のVTR。両者打ってはクリンチの繰り返し。手を広げ、首をかしげるシーンが目立ったが、大毅は9回以降、左右のフックを振り回し、試合をものにした。

 「21年間生きてきて一番うれしい。センスも才能もないと言われてきたオレが頑張ってこれた。家族のおかげです」

 どうしてもボクシングを好きになれなかった。小学生の時から自宅で特訓の日々。内心は同級生のようにアニメを見たかったし、友達と遊びたかった。だが、亀田家の次男として、父に従うしかなかった。

 もう一つ好きになれない理由がある。「小さいころからお兄ちゃん(興毅)と和毅はできてな。オレだけ全然できへん。『なんで弟ができるのに、おまえはダメなんや』って怒鳴られた」。常に3兄弟で比較されてきた。興毅と和毅は天才、大毅はダメ。3兄弟の“劣等生”。トレーナーや父から「3兄弟でおまえだけは世界王者になれない!」と罵(ののし)られることもあった。オレだって練習すれば世界王者になれるんだ−。大毅は己を信じてきた。

 プロ18戦。兄も弟も経験していないことがある。2つの黒星だ。「亀田家は負けたらダメ、と思っていたけど、オレの場合、負けがあったから強くなれた」と素直に語る。昨年11月、兄は世界王者になり、今年1月、弟もメキシコのベルトを巻いた。芽生える危機感。「今回負けたら、もう亀田家におられへん…」。初めて本気でボクシングに向き合った。

 3度目の世界挑戦。最後のチャンスで、世界の頂点に立った。これからは虚勢で亀田家を“演じる”必要もない。求められるのは、王者としてふさわしい実力、振る舞いだ。

 「王者になった実感もないし、何回も言っているけどオレ、強くないですよ。内容もよくない。この試合負けたらどないしようかと…。重圧に勝てたことがすべてです」

 真の世界王者へ−。大毅の戦いはこれから始まる。 (森合正範)

 

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