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北朝鮮女性の「売られる生命」 米人権団体が報告書
【ワシントン=古森義久】米国の民間人権擁護団体「北朝鮮人権委員会」は29日、「売られる生命」と題する北朝鮮女性の人身売買の実態を明らかにした報告書を発表した。同報告書は実際に結婚や売春を強制された北朝鮮女性58人からの聞き取り調査をもとに中国、北朝鮮両政府の人権抑圧を非難している。
リチャード・アレン元大統領補佐官とスティーブン・ソラーズ元下院議員が共同委員長を務める「北朝鮮人権委員会」は、元連邦議員や政府高官、学者らで構成する。同報告書はまず、専門職員たちがこの2年ほどに中国・東北部の吉林省と黒竜江省で実施した北朝鮮出身の女性たちへの調査の内容を明らかにした。
それによると、(1)北朝鮮女性たちは本国での貧困や飢餓のために中国の吉林省と黒竜江省に出稼ぎのつもりで入り、朝鮮族の中国人のブローカーに強制的な売春や結婚へと人身売買されたというケースが大多数(2)商業結婚の相手は中国人の大幅に年上の男性や身体障害の男性が多く、代金は500ドルから1500ドルの場合がほとんど(3)密入国してきた北朝鮮人は逮捕された後、本国へ強制送還する場合が多く、送還後は北朝鮮できわめて過酷な懲罰を受ける−という。
同委員会は報告書発表の記者会見で北朝鮮政府から残酷な措置を受け、現在は韓国に定住した脱北者女性2人を紹介し証言させた。その一人のバン・ミスンさんは「北朝鮮で夫が死に、生計が立てられず、2004年に中国へ逃げて、ずっと年長の身体障害の中国人男性の妻として585ドルで売られた。その後、中国当局に拘束され、北朝鮮に送還され、特別の収容所に入れられてものすごい迫害にあった」と述べた。
ワシントンを訪問中の日本人拉致問題に関する「家族会」や「救う会」の代表たちもこの記者会見に加わり、北朝鮮当局の残虐行為についての体験談に耳を傾けていた。