社説
鳩山民主党/自ら正す決意が問われる
鳩山由紀夫首相や民主党は、小沢一郎・党幹事長の資金管理団体をめぐる収支報告書虚偽記入事件を、どこまで重く受け止めているのか。小沢氏の不起訴と元秘書ら3人の起訴で捜査は事実上終わったとはいえ、決して済んだ話にはできない。
検察の処分を受け、きのうの衆院予算委で小沢氏の責任について問われた首相は「小沢氏とこの件で話していない。近いうちに話をしたい」とかわした。平野博文官房長官は、高まる国民の政治不信に関して「小沢氏が必要なときに適切に説明するだろう」と記者会見でコメントしている。
こうした発言からは、問題の深刻さを認識して即座に対応しようという姿勢が伝わってこない。むしろ、不起訴という結果に安堵(あんど)感すらにじむ。党内にも「区切りがついた」というムードがあるようだが、国民感覚からは遠いと言わざるを得ない。
起訴された3人は、小沢氏の側近といえる。虚偽記入が疑われたカネも巨額だ。政権交代で政治が変わることを期待したのに、相変わらずの「政治とカネ」の問題を見せつけられてウンザリする。そんな失望感を抱く人は多いだろう。
国会では、国民生活に直結する新年度予算案など課題が山積する。審議は急がねばならないが、前提となる政権への信頼が揺らいでいることに目を向けるべきだ。
いまこそ民主党は、自浄能力を発揮して政治停滞から脱しなければならない。首相は党代表として先頭に立つ責任がある。自らも偽装献金問題を抱えているとあれば、なおさら指導力が厳しく問われる。
予算委審議で首相は「(問題の)根を絶たないといけない」と強調、企業・団体献金の禁止の早期実現に期待感を示した。枠組みの見直しは欠かせないが、すぐにでもできることはあるはずだ。
捜査が終結したのなら、今度は党として事件の経緯や背景を検証し、国民に明らかにする。小沢氏らの政治的、道義的責任についても見解を示す。そうした取り組み抜きに当人の説明や意思表明を待つと言うだけでは、理解は得られまい。
党内から小沢氏に説明を求める声があまり大きくならなかったのも奇異だった。野党から「独裁」と疑念を呈されるような党風土を改めることも必要だ。
事件で浮かび上がった古い体質に、どこまで本気になって立ち向かえるか。決意のほどが不十分なら、政権交代に託した有権者の期待はしぼむだけだろう。
(2010/02/06 10:56)
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